北陸では、「大学通信」が毎年発表する「実就職率ランキング」で4年連続トップを独走する金沢工業大学に目が留まる。2020年の実就職率はなんと98.1%だ。コロナ禍の対応について、同大学長の大澤敏さんが振り返る。
「学内のカウンセリングセンターが主体となり、学生のメンタルケアを積極的に行いました。学生同士のコミュニケーションを生かしたTA(ティーチング・アシスタント。教授陣の授業のサポートを行う先輩学生)の声かけによって新入生の孤立を防いだほか、運動指導をしてメンタルケアをバックアップしました。
また、学生が教え合う形でオンライン環境の構築を進めました。現在は対面授業とオンライン授業を半々にして、オンラインでの疑問点を対面授業で解決する形で、理解度を深めるようにしています。
最も感染が危惧された時期には学生のアルバイトを禁止し、その分、申告のあった学生約3300人に3万円もしくは5万円の経済支援を行いました」
また、学生同士はもちろん、学生と教員が日頃からコミュニケーションを取ることを重視。1995年から、「自ら考え行動する技術者」を理想の学生像に定め、問題発見・解決型教育の「プロジェクトデザイン教育」を実施している。また2011年からは米マサチューセッツ工科大学などが中心となって立案した、より高度な工学教育を目指す団体「CDIO」に日本で初めて加盟した。
同大学は、大学通信が毎年発表している「面倒見が良い大学ランキング」において、16年連続1位に輝いている。
「面倒見がいいとは、すべて大学が世話するという過保護な教育のことではありません。学生が自ら自由に考え、実行する土壌を整えたうえで、学生が声を上げれば教員が手を差し伸べ、一緒に考え、行動するようにしているのです」(大澤さん)
加えて、面倒見がよく柔軟な大学は、多くが資金力にも恵まれている。大学入試制度に詳しい「大学通信」の安田賢治さんが語る。
「同ランキングでは、4年間ゼミが必修で、学生の自主性を重んじる武蔵大学のほか、マンモス校として知られる早稲田大学や法政大学、寄付金の多い慶應義塾大学なども、コロナ禍で迅速に学生支援を打ち出したことが評価され、昨年よりランクアップしています。本来の風土や意識に加え、設備投資や制度改革の資金源に恵まれていることも重要です」