甲南大学(兵庫・神戸)では、上級生が大学に来られない新入生のためにオンラインで学長参加の歓迎会を開いた。
こうした対応は、これらの大学に学生主体の視点と、学生が自ら考える環境が整っていたからだ。
大学はただ「知識を授ける」だけの機関ではいけない。学生の主体性を伸ばし、柔軟な対応ができる大学こそ、本当に“役に立つ”のではないだろうか。
現在、多くの大学がオンライン授業を導入している。何年も前からオンデマンド授業を行ってきた予備校の「東進ハイスクール」は、この普及をどう見ているか。東進ハイスクール広報部長の市村秀二さんが話す。
「同じオンライン授業でも、予備校と大学は目的が大きく異なる。予備校では、教科書に書いてあること、入試に出ることをわかりやすく解説することが目的。しかし、大学ではそれにとどまらない。“教科書の内容から何を、どう考えられるか”、あるいは答えのない課題に取り組むといった、深い考察や探求心を引き出すことが重要です」
時間と場所の制約がなく理解できるまで何度でも繰り返し視聴できるメリットは大きい。しかし、大学教育の神髄は「キャンパスという場所」にこそあると、出口さんは語る。
「学生にオンライン授業についてアンケートを取ると、学生の6割が“よく理解できた”と答えています。しかし、講義は大学で得られる学びの半分でしかありません。サークル活動や食堂での雑談や議論など、五感を使ってさまざまな気づきを得るのが大学という場であり、大学は学生の気づきを後押しする場所であるべきだと考えています」
自分の考えの軸を見つけて磨くことこそが、大学に通う意義なのだ。
※女性セブン2020年12月3日号