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ライブどころか練習も出来ず… コロナに翻弄されるバンドマンたちの憂鬱

「ウチのバンドはボーカル、ギター2人、ベース、ドラム、キーボードの6人編成ですが、いつも練習しているスタジオから、“ソーシャルディスタンス確保のため、1スタジオ5人まで”というお達しが出てしまいました。そのため、メンバーが全員揃っても、1人はスタジオを出なくてはいけません。出る人間は1曲ごとに交代です。

 ドラムが抜けるのはあり得ないので、必然的に抜けるのは残り5人のうちの誰か。ただ、ギターソロがあったり、イントロがキーボードだったりする曲は抜けられないので、結局ベースが抜ける回数が多くなるんです」(Iさん)

 それでもスタジオ代は割り勘。釈然としない気持ちが芽生えつつあるという。

リモートでもトラブルのタネは色々

 リモートでの練習を試みるバンドマンもいる。トリオ編成で、プログレッシブ・ロックのコピーをしているHさん(40代/男性)は、IT系企業に務め、メカを操るのはお手の物。他のメンバーもパソコンに通じており、さっそくリモート練習にトライしたが、企画倒れに終わったという。

「我々がコピーしているバンドは、もともと変拍子が多く、高速のフレーズが多い難解な曲調なのですが、それをリモートで合わせると、演奏が合っていないのか、通信状態が悪くてズレているのかいよいよわからないんです。コンマ何秒でもタイミングがズレると成立しない音楽なので、“リモートは無理だね”という結論に落ち着きました」(Hさん)

 リモート練習では、こんな人もいる。ロックバンドでベースを弾いているTさん(40代男性)は、家を追い出されそうになった。

「メンバーから『自宅なら練習は何時でもいいよね?』と言われ、深夜にリモートで音合わせをしていたら、3日後にアパートの大家から手紙が届きました。私はエレキベースをアンプに繋がず“生音”で弾いていましたが、それでもうるさかったようで、“住民からクレームが届いている”という内容でした」(Tさん)

 それならやはりスタジオでやるのが一番だが、デスメタルバンドをやっているKさん(30代/男性)は、曲調が激しいが故の悩みにぶち当たった。

「私達がやっているジャンルのボーカルは“デス声”で歌うもので、歌というより“ノイズ”。分かりやすく言えば、“吐いてるみたいな感じ”です。1回、スタジオに入ってみましたが、死ぬほど飛沫が飛ぶので、ボーカルはマスクの上にフェイスガードを着用。しかし1曲終わると、『無理。こんなんじゃ歌えない』とのことで、バンドは現在活動休止中です」(Kさん)

 現在はイベントの人数制限も緩和されつつあるが、「ライブハウスでソーシャルディスタンスなんて無理」「ガラガラのハコ(ライブハウスのこと)でライブなんてあり得ない」と、悲観的な見方が多いようだ。海外でのライブ経験があり、現地のプロモーターとも交友があるSさん(前出・ハードコアバンドのメンバー)によれば、「欧米では、今年はおろか2021年もライブは無理」という認識だそうで、まだまだ我慢を強いられる状況は続きそうだ。

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