田代尚機のチャイナ・リサーチ

ワクチン開発でも存在感を増す中国企業 外交戦略に活用も

中国企業が開発中の新型コロナウイルスワクチンが入ったコンテナを降ろすブラジルの空港作業員ら(AFP=時事)

 日本でも新型コロナウイルスの感染拡大が続いているが、世界全体から見れば日本の感染者数、死亡者数はともに低い水準とも言える。WHO(世界保健機関)が12月1日付でまとめた資料によれば、11月29日時点における世界全体の累積感染者数は6186万6635人、累積死亡者数は144万8990人であった。この内、アメリカはそれぞれ順に1293万9666人、26万2736人。欧州は1849万5511人、41万2362人で、日本は14万4653人、2106人である。

 欧米、南アジアで多くの感染者が出ており、東アジア、アフリカなどそれ以外の地域は相対的に少ない。最近のいくつかの研究によれば、ネアンデルタール人由来の遺伝子の一部に重症化リスクを高める部分があるとの指摘もあるが、理屈はどうあれ現実として、アメリカや欧州における新型コロナ禍は日本人の想像をはるかに超えた大災害となっている。

 1週間(11/22~11/29)の状況を付け加えておくと、世界全体の累積感染者数は393万5330人、累積死亡者数は6万9916人。アメリカは順に115万654人、1万276人。欧州は157万3354人、3万5321人で、日本は1万4474人、132人である。欧州は足元で沈静化する兆しもあるが、アメリカでは依然として厳しい流行に悩まされている。

 こうした状況の中で、待望のワクチンが完成した。アメリカのファイザー社とドイツのビオンテック社が共同開発しているワクチン、アメリカのモデルナが開発しているワクチンについて、今月中にもアメリカ国内での緊急使用許可が下り、使用が開始される見込みである。

 イギリスでは8日、アメリカに先駆け、ファイザー、ビオンテックが共同開発したワクチンの接種が始まった。

 そのほか、イギリスのアストラゼネカが開発しているワクチンが、2021年1月下旬にもアメリカで緊急使用許可申請が行われる見込みだと報道されている。

 他の感染症と比べれば、新型コロナウイルスは圧倒的に多くの感染者、死者を出しており、ワクチンに対する需要は大きい。欧米で被害が深刻なので欧米の製薬会社の開発が目立つが、新型コロナ禍の発祥の地とされているのは中国であり、発症当時から中国企業のワクチン開発意欲も非常に強い。

 とはいえ、4、5月の段階で、中国は新型コロナウイルスの封じ込めに成功している。前述のWHO資料によれば、中国の累積患者数は9万3329人、累積死亡者数は4750人で、調査直近1週間では順に681人、1人に過ぎない。

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