ただ、感染が封じ込められている中国であっても、警戒を怠ってはいない。人口が多いだけに、医療関係者だけを見てもワクチン需要は大きい。もちろん、それ以上に海外の需要は強い。グローバルでは圧倒的な供給不足の状態であるだけに、他社よりも少しでも早く量産化、低価格化に漕ぎつけることができれば、ワクチン事業は大きな収益を生みそうだ。
外交戦略として、国家がワクチンを買い上げて非欧米地域を中心に支援するようなことも今後、行われるかもしれない。
国有、民営を問わず、多くの中国企業が積極的にワクチン開発を進めており、世界中でフェーズI、II、IIIの実験を展開している。実際に認可が下りて、一般に利用される前の段階で、実験用として既に急ピッチで生産を拡大させている。
こうした企業に投資を考える日本の投資家もいるかもしれないが、その多くは、未上場企業であったり、日本の投資家が購入することのできない銘柄であったりする。そこで、ここでは日本の投資家が買うことのできる銘柄に絞って、ワクチン関連企業を紹介しておく。
中国国薬集団は11月、国家薬監局に使用申請を行ったと発表した。11月17日、劉董事長は、「世界150か国以上の研究員など百万人以上に試験使用したが、感染は一例もない。今年の年末までに1億剤前後の生産能力を確保し、来年には10億剤の生産能力を確保する」と発言している。関連銘柄は国薬一致(000028)、国薬(香港:1099)などである。
そのほか、フェーズIIIの臨床実験中である康希諾生物(香港:06185)、上海復星医薬(香港:02196、600196)、開発の潜在能力が高いとみられる長春高新技術産業(000661)、華蘭生物工程(002007)などにも注目したい。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。