関東地方を中心に、中部・近畿に約180の店舗を展開するスーパーマーケットの成城石井が8月に消費者に対して実施した調査によれば、ネットショッピングの利用者は前年より3割ほど増えている。一方、食品の購入に関しては、回答者の89%が「ネットよりも食品スーパーを重視する」と回答している。
口にするものは手に取って選びたい、という心理はもちろんのこと、外に出て買い物をすること自体が“イベント”になってきているのだ。長引く自粛生活でストレスが募った一方で、買い物、料理、食事といった、日常の当たり前の行為に楽しみを見出そうとする家族が増えたのかもしれない。
「コロナ前は、『ライフ』と『ワーク』がきっちり分けられ、特に男性は猛烈に仕事をするのが美徳とされていました。ところが、在宅勤務が浸透したことで、“家族と一緒に食べ物を調達し、一緒に調理して、顔を突き合わせて食事をする”という、まるで大昔の農耕時代のような暮らしに戻った家庭が多いと感じています。
わが家も、私も息子も在宅勤務になり、大学生の娘もリモート授業になり、妻と4人揃って食事することが増えた。以前は同じ家に暮らしていてもすれ違ってばかりで、挨拶をするくらいでした。娘の彼氏の話などは、慌ただしい中では聞けません。“会いたくても会えなかった家族と、やっと会えた”という感覚です」(前野さん)
「単身赴任中の夫とほとんど連絡を取っていなかったのに、コロナを“口実”に毎日電話するようになって、関係が回復した」「地方の実家でひとり暮らしをしている80代の母と毎日オンラインでランチを共にするようになって、子供の頃のような関係を取り戻した」など、コロナ禍において互いを思いやる気持ちを取り戻した家庭は少なくない。
※女性セブン2021年1月1日号