新型コロナウイルスの感染拡大によって普及したリモートワーク。上司や同僚と直接顔を合わせる機会が減ったが、リモートならではのハラスメント、つまり「リモハラ」も問題視されるようになった。では、いったいどのようなケースがリモハラとなりうるのか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談をもとに解説する。
【相談】
2020年はコロナ禍ということで、20代の娘が勤務する会社でもリモートワークを行っています。オンライン会議などをたびたび行っているのですが、画面内に部屋が映り込んでいたため、上司から部屋のインテリアについてとやかく言われ、不快な気分になったそうです。また、オンライン飲み会に執拗に誘われたりするので困っていると言います。最近は、「リモハラ」というものがあるそうですが、娘の上司のそうした態度はリモハラに当たらないのでしょうか。どのように対処するのがよいですか。 (神奈川県在住・パート・52才)
【回答】
「リモハラ」は、リモートワークハラスメントの略称です。コロナ禍の影響で一気に広まったリモートワークにおいては、実際に就業している場所(自宅など)がモニターに映ることは避けられません。娘さんの例のように、モニターに映って送信された業務以外の私的な事柄について心ない言及をされたりして、不快に感じさせるようなことは最近よく起きています。
職場のハラスメントとしては、セクシュアルハラスメント(セクハラ)とパワーハラスメント(パワハラ)があり、厚生労働省が一定の定義を公表しています。これらのハラスメントがあると職場環境を著しく悪化させるので、国は事業者が従業員を研修したり指導して、ハラスメントの発生を防止し、万一発生した場合には、対応する体制を定めることなどを求めています。
リモハラには特に定義はありませんが、この2つのハラスメントがリモートワークを介して行われる場合をいうのでしょう。
パワハラとは、職場の優越的関係を背景に、業務上適正な範囲を超えることを行って精神的・肉体的苦痛を与えたり、職場環境を悪くすることです。上司が部下の私生活上のことを興味本位に監視したり、職場で漏らしたりして、労働者が不快に感じられる程度になれば、パワハラに当たります。