緊急事態宣言で飲食店の時短営業が求められるなか、もともと深夜が書き入れ時の水商売は土壇場の対応を迫られている。1店舗あたり1日6万円という補償は、小規模な店ならいざ知らず、家賃が何百万円、ホステスが100人以上所属といった「大箱」であれば雀の涙だ。『週刊ポスト』(1月15日発売号)では、時短要請に従いたくても従えない水商売の現場をリアルに報じているが、そこで取材に応じた店の本音を詳しく紹介する。
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銀座の高級クラブ「ル・ジャルダン」は、コロナ禍の前には4店舗で年商10億円を誇った一流店である。一律の補償では家賃も払えないという「大箱の悲哀」の典型だ。同店の望月明美ママは、時短に応じるかどうか決めかねている。
「当面は17時に開店して様子をみてみます。お客様が来なければ20時に閉めるかもしれませんが、まわりのお店の様子なども見ながら判断したいです。だいたい、ウイルスは夜寝てるわけではないから時間で区切るのもどうかと思います。
昨年の緊急事態宣言の時は、300万円の協力金もあったし、120人いる女の子たちの雇用調整助成金、持続化給付金などで、合わせて1億円以上の支援がありました。それが今回は1店舗につき1日6万円だけ。家賃にもなりません。うちの経営規模だと、これでは休みたくても休めませんよ」
ホステスたちも、それぞれ苦しい事情を抱えているという。
「いまは女の子の数は60人で半減しました。ずいぶん水商売はいじめられましたから、看護師やプログラミングの資格を活かして昼の仕事に移った子もいますし、田舎に帰った子もいました。いま残っているのは、ほかの仕事に就くのが難しい子たちです。シングルマザーで子育てをしていたり、家族が病気で昼間は介護をしているとか。潰れてしまった他店から来た子もいます。楽して稼いでる子なんていないんですよ」(明美ママ)
政府の対策には不公平感を感じている。
「あるバーは、マスター1人の小ぢんまりした店なので、1日6万円の補償でがっぽがっぽだと言っていたそうです(苦笑)。感染対策も、うちは検温も換気も、PCR検査も抗体検査もしてきました。銀座のクラブは徹底していますよ。でも、マスクもしないで客をぎゅうぎゅうに入れているガールズバーなんかもある。何かおかしいですよね」(明美ママ)