どうしても話がつかなければ、修繕工事に必要な範囲を図面で特定し、かつどんな工事をするのかを明らかにしたうえで、そのための使用を承諾することを求める裁判を隣地所有者を相手に提起することができます。実家には使用権があるので、必要な範囲で使用が認められると思います。
ところで、ご質問だと隣家との間が狭いとのことです。都市計画で実家の建物が防火か準防火地域内にあり、かつ外壁が耐火構造の家である場合を除いて、隣地との境界から50cm空けて建築する義務があります。もし違反していれば、隣地所有者が立入拒否の理由にするかもしれませんが、そのような事情は使用権を否定する理由にならないとした裁判例もあります。
もし隣地使用で損失が生じたときは、隣地所有者はその弁償を請求できます。なお、隣地使用権があるからといって、承諾なく隣人の住居までに立ち入ることはできないのでご注意ください。
隣人は頑なな人のようです。裁判所で承諾を命じられても従わず、修繕工事を妨害する恐れがあるときは、裁判で妨害禁止の命令も併せて求めておくと有効でしょう。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2021年2月4日号