『やみつき感触トイ 気泡わり専用アラビックヤマト』(1100円)は、おなじみの液状のりを使った「おもちゃ」。のりの中に現れる気泡を割る、という単純なものだ。中身はのりであるにもかかわらず、使わないことを強くすすめるこの商品開発者は、有名なおもちゃクリエイターだった──。
『気泡わり専用アラビックヤマト』を考案したのは、高橋晋平さん。『∞(むげん)プチプチ』や『∞エダマメ』などの大ヒットおもちゃを生み出したクリエイターだ。高橋さんは小学生の頃、病弱のため運動や遊びを制限されていた。「野球部に非ずんば人間に非ず」的な雰囲気が残る時代で、同級生になじむことができず、孤独な休み時間を過ごしていたという。
そんなひとりで過ごす休み時間をともに乗り切ったアイテムが液状のり『アラビックヤマト』だった。
「アラビックヤマトは、ある程度中身の量が減ると、横に倒したときに気泡ができます。この気泡をねじ切るようなイメージで容器をひねると、気泡が“ぷにゅん”と割れるんです。これが楽しくて繰り返しているうちに、『ぼくはこの“気泡わり”で世界最強を目指す!』という妄想をするようになりました」(高橋さん・以下同)
それから時は経って2018年。この遊びのことを何気なく知人に話すと、「同じ遊びをしていた」という人が何人も現れた。
「ぼくの“気泡わり最強”の妄想を実現するため、同志とつながりたいと思いました。そこで考えたのが、のりとしては使わない、『気泡わり専用アラビックヤマト』でした」
『アラビックヤマト』の発売元・ヤマト株式会社にこの企画を持ち込んだところ、創立120年のセレモニー事業の一環として公認・監修協力をしてもらえることとなった。
開発の肝となるのは、「いちばん気持ちよく気泡わりができる液状のりと空気の割合」を設定することだった。これがすなわち、気泡わりの難易度となる。おもちゃは、簡単すぎるとすぐに飽きられてしまうため、ユーザーに長く楽しんでもらうには、ちょうどよい難易度に設定する必要がある。協議と実験の結果、通常内容量の50ミリリットルから若干減らした35ミリリットルにすると、10回に1度きれいに割れる、ちょうどいい難易度になることがわかった。