新型コロナウイルスで打撃を受けているのは飲食業界だけではない。人々の移動が減少したことでタクシーの利用も激減しているという。『女性セブン』の名物記者“オバ記者”こと野原広子氏が、苦境に立たされたタクシー業界の現場に出向き、レポートする。
* * *
「2度目の緊急事態宣言、どうですか」
緊急事態宣言が1都3県に発出されて5日後の火曜日の昼間、家の前からタクシーを拾ったときのこと。後部座席に腰を落ち着けてそう話しかけたら、即答だった。
「どうにもこうにも、もう最悪ですよぉ。テレビじゃ、飲食店の人が『これっぽっちの協力金じゃやっていけない』ってボヤいているけど、冗談じゃないっすよ。われわれタクシーは、飲食店が『涙銭』って言っているその協力金すら出ないんだから」
一瞬こちらがひるむような、ちょっと怒ったような口調で、男性ドライバーからいきなり不満をぶつけられた。大きな声じゃ言えないけれど、実は私、月に数回は、アルバイトに向かうのに、家の前でタクシーに手を挙げる。行き先は車で5~6分の地下鉄の駅。料金は初乗りにちょっと乗っかって580円か、せいぜい660円。って、いやいや、“せいぜい”なんて言っていられる身分じゃないんだわ。私のアルバイトの時給の半分が飛ぶんだから。
何やってんだよ(歩けばいいのに!)と思うけど、時間の余裕をなくすと、「タクシー」という文字が頭の中に点滅するクセはどうにもこうにも。行き先を告げた後、「近くてすみません」とつけ加えるクセも直らない。
最近は、「あ、いや、乗っていただけるだけでありがたいです」と言う運転手が多いけど、一方、口ではそう言いながら内心は“チッ”と舌打ちしているドライバーもいるだろう。実際のところ、運転手さんたちは最近、妙にイラついている(ように感じる)し、グチも多い。コロナ禍に対する政府の策があまりにひどくて、この先の生活の不安が拭えないと一様に言う。
政府が飲食店ばかりに制限を加え、反発を受けたら「協力金を出す」と言い、「苦しいのは飲食店に食材を提供している生産者だって同じだ」という意見が出たら、「そちらにも協力金を出す」と言う。次から次へと金を出して、不平不満を押し込めようとするけれど、その場しのぎ。
「エラそうに“協力金”とか“給付金”とか“支給する”とか言うけど、元はオレらの金なんだぞ、って言いたいよ。出どころは国民の税金なんだろ!? それを政治家が国民に恵んでやっているかのような言い方をされるとホント、ムカつくよ。いまは、政治家も役人もホント、ダメ。“ガースーです”とか言ってる場合かよ。スガどころか“スッカスカ”だよ。コロナで商売あがったりなのは、飲食店ばかりじゃないんだよぉ」