新聞広告の役割が昨今は変わってきているという。かつて広告業界では、新聞広告の役割は、「伝えたいことを細かく解説する」といった面が重視されていたが、今では別の役割も期待されている。いったいどういうものか。広告会社出身のネットニュース編集者・中川淳一郎氏が解説する。
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結論から言うと、新聞広告って、今や「ネットで拡散させる」という大きな役割も担っているようです。「新聞なんてオワコン」みたいな言い方をネットではよくされますが、電通や博報堂の人と話していたら、逆に「新聞広告、イケてる!」なんて言うんですよ。
なんというか、まだまだ「遊びができる」という感覚があるんですよね。最近話題になったのは、『鬼滅の刃』の最終巻が2020年12月4日に発売された時、発行元の集英社が17種類の全面広告を主要5紙に掲載しました。これらはSNSで大拡散し、普段新聞を読まないファンも新聞を買い求めたようですし、転売狙いの人まで現れて、フリマアプリで出品されているケースも散見されました。
2004年には漫画『スラムダンク』の1億冊達成を受けて主要キャラクター6人が6紙の広告に登場して話題になりましたが、今回の『鬼滅の刃』の広告展開を目にして、このことを思い出しました。
ホンダは2018年の「スーパーカブ60周年」に合わせて、様々な新聞広告展開を実施しました。「新聞配達の日」に配達員に向けたお礼の広告を出したり、スーパーカブで通学する種子島の高校生に卒業の祝福メッセージを出したりするなど、これらもニュース化されるほど話題になりました。
他にも忘れてはならないのは、2016年にはSMAPが解散発表した後に、ファンがいわゆる「三行広告」を東京新聞をはじめとした様々な新聞に出して、彼らへの思いを伝えた件があります。その後はクラウドファンディングで朝日新聞に全面広告を出すまでのムーブメントになりました。これらの広告はいずれもSNSに多数投稿され、ファンがシェアをしました。ファンが新聞広告を通じて繋がったのです。