そして、いよいよ唾液による抗原検査を受ける場所に連れて行かれる。梅干しとレモンの写真が貼られたブースで、試験管のようなものに唾液を入れる。それが終わると、広々した待合所に誘導されて、そこで検査結果を待つという具合だ。
職員曰く、「今日は人が少ないですね。普段なら何十人もいるんですけどね」とのこと。確かに、この日は早朝ということもあってか、検査を受けるのは私のほかは、前述の便の乗客1人だけだった。検査人数が少ないこともあってか、30分ほどで結果が出た。無事に「陰性」の結果を受けて、ようやく入国手続きだ。
パスポートを提示して入国を果たすと、先導してくれた職員たちが「ご協力ありがとうございました」と言い、深々とおじきをしてくれた。命がけで仕事をしている職員たちから、こんなことをされてはたまらない。胸が熱くなった。
成田空港の国際線到着ロビーでは、鉄道に向かうエスカレーター前に駅員が立っていた。公共交通機関を使おうとする人への抑止力というわけだろうか。私は実家に帰る前に、ホテルで自主隔離をするため、予約した帰国者専用バスに乗り、ホテルへと向かった。
「甘い」と批判されがちな日本の空港検疫だが、懸命に働く職員たちの姿がそこにあった。彼らの努力を無駄にしないためにも、帰国者はより慎重な姿勢が求められるだろう。