さらに、耳にかけるひもは包帯からヒントを得た。耳ひもをきつくして顔にフィットさせればマスクとしての性能は上がるが、耳が痛くなったり、かぶれたりすることもある。その点、包帯はぐるぐる巻いてもうっ血せず、フィット性も高い。岸さんが子供のけがの手当てで包帯を巻いているときに、「これは使える!」と思いついたという。
『ナノエアーマスク』が発売されたのは2020年1月。時はすでにコロナ禍で市場のマスク不足は深刻だった。店頭に並べばあっという間に売り切れてしまい、消費者の声を聞く余裕もなくなってしまったという。発売当初は「花粉を99%カット」を惹句にしていたマスクだったが、半年後にはさらにウイルス飛沫も同程度カットする仕様に進化させた。マスクのフィルターの性能の研究を、発売後も続けていたのである。現在、コロナ以前に比べ、およそ1.5倍の増産を行っているが、それでも品薄状態は続いている。この4月にはさらなる増産も計画しているというから期待したい。
「世の中にお客さんに100%満足を与えている商品はない」という考えがアイリスオーヤマの商品開発の根幹にはあるという。
「満足いかない商品でも、それに気がつかなければ黙って使い続ける。しかし、人々が気づいていない“真の不満”を拾い上げていくことが次の開発のきっかけになります」と言う岸さん。「マスクに関しては、肌触りの向上やファッション性を高めていきたい」と締めくくった。
※女性セブン2021年2月18・25日号