事業所向け・個人向け通販事業を展開するアスクル株式会社。コロナ禍の巣ごもり需要で好調な業界だが、ライバルも多く競争は熾烈だ。勝ち抜く秘策を吉岡晃社長(53)に訊いた。
──平成元年(1989年)当時、何をされていましたか?
吉岡:当時は青山学院大学理工学部の学生でした。専攻はシステムの研究で、卒業論文は「AI(人工知能)を用いた株価予測の支援システム開発」。研究室仲間と共同で、過去の企業データを用いて、AIにその当時の株価を予測させました。
予測と現実の株価を比較したところ、的中率は8割。新聞記者が取材に訪れ、証券会社の社員もヒアリングに来たほどの評判になりました。
それもあって、証券会社に就職したり、システムエンジニアになった仲間が多かった。しかし私はプログラミングなどがあまり得意ではなかったので、別の道を選びましたね。
──大学を卒業し、1992年にはセゾングループのデベロッパーである西洋環境開発に入社した。
吉岡:志望動機は、都市開発やリゾート開発は華やかで夢があると感じたことでした。しかし、入社した途端に土地バブルが崩壊した(笑い)。
会社の業績がみるみるうちに悪化し、塩漬け物件や子会社の売却、希望退職募集のプラン作成など、前向きとはいえない仕事に忙殺されました。
その後、西洋環境開発は2000年に約4000億円の負債を抱えて破綻。私は経営企画の部署で特別清算の申請から受理までを見届けて退職しました。おかげで、財務諸表を読み込む力は相当鍛えられたと思います。
医療向けビジネスを拡大
──翌2001年にアスクルへ転職しています。
吉岡:当時からアスクルの取り扱い商品はオフィス用品や家具・日用雑貨がメインでしたが、私が入社して取り組んだのは医療機関向けビジネスでした。
需要が大きく将来性があることはわかっていましたが、当時は規制が強く、注射器やカテーテルだけでなく、アルコール消毒剤も許可を取らねば販売できなかった。いろいろなハードルを越えていく必要がありましたね。
最初の頃は医療品メーカーから商品を卸してもらうのも一苦労でした。しかしチームの皆さんの努力で、現在ではコロナ禍でメディカル商品の需要は一段と膨らんでいます。