また減少率4番目の「その他の消費支出」には交際費が含まれており、その減少が寄与しています。5番目の「交通・通信」は、交通費を「使わない」ことが影響しています。2020年後半にはGo Toキャンペーンが盛り上がりを見せましたが、年全体では大きく減少となりました。
なお、支出費目のうち「食料」「保険医療」「家具・家事用品」は堅調に増加。外出しないぶん家ナカ生活の充実、そして何より健康面への配慮からの支出増加と読み取れますが、それでも金額的には全体の消費支出減少をカバーするほどではありません。
以上から、2020年の家計を平均値的に捉えれば、冒頭に述べたように「使えるお金は増えているのに、お金を使っていない」状況だった、とみることができます。コロナ禍が収束していない状況では無理からぬことだと思いますが、それによって出てきた家計の“余力”は、実は消費以外にこんなところにも向かっていました。
有価証券純購入:2019年1,020円→2020年2,669円(161.7%増)
有価証券、つまり株や債券等の金融資産に「投資」するお金が急増しています。2,669円という金額、実はここ20年間で過去最高の数値。2020年半ばから、国内外の株式市場の活況が注目され、最近も記録的な上昇が続いていましたが、「コロナ禍でお金の使いみちもないし、ここは株式市場の流れに乗るか……」という生活者が増えていそうです。
20年間、右肩上がりに増えている支出とは?
さて、せっかくなので(?)ご参考までに、2000年から2020年までの20年間での家計の変化について、もう少しだけ補足します。
2020年に大きく落ち込んでしまった「被服及び履物」への支出。ですが、この状況は短期的なものに留まりません。
被服及び履物: 2000年17,195円→2020年10,654円(38.0%減)
グラフをご覧いただいてもわかるように、ファッション関連の支出は2000年から少しずつ減り続けており、20年間で4割弱も減ってしまいました。安価なファストファッションの浸透など要因は色々と考えられますが、生活総研「生活定点」から生活者意識を紐解くと、
「服装は個性を発揮するための手段のひとつだと思う」:2000年55.0%→2020年51.4%(3.6pt減)
「普及品より、多少値段がはってもちょっといいものが欲しい」:2000年42.4%→2020年33.1%(9.3pt減)
「ファッション動向に敏感である」:2000年17.8%→2020年13.5%(4.3pt減)
以上のように、ファッションに対する関心や積極さが少しずつ減ってきており、このあたりの意識変化も支出減少につながっていそうです。