さてその一方で、20年間じわじわと伸びている支出項目もありました。
交通・通信:2000年43,632円→2020年49,469円(13.4%増)
直近こそコロナ禍の影響でガクンと減少しているものの、そこまではじわじわと上がり続けていたのが「交通・通信」への支出。物価変動等を受けた交通運賃上昇の影響もありますが、やはり携帯電話・スマートフォンの普及による通信費用の増加が大きく影響しています(以前のこちらの記事〈携帯料金は高すぎる? 家計を圧迫する通信費、20年で1.5倍に〉もご参照ください)。
ただし、昨年から通信会社各社の新料金プランが続々発表されていることもあり、これが今後の家計支出にどのように影響するのかは、注目すべきポイントと言えるでしょう。
最後に、消費ではありませんが、こんな支出の変化についてもご紹介しましょう。
非消費支出:2000年88,343円→2020年110,896円(25.5%増)
所得税や住民税などの「税金」、健康保険や介護保険といった「社会保険料」などの支出が、こちらの「非消費支出」となります。多少の増減はありますが、20年間ほぼ右肩上がりで推移しています。この国で生活し、社会保障を受けるためには仕方のないことではありますが、保険料率の引き上げ等によって、じわじわと家計にインパクトを与えています。
「稼ぎは増えているはずなのに、あんまり家計に余裕が出ない……」と感じたら、このあたりの支出が影響しているのかもしれません。
いかがでしょうか。20年間のスパンで家計支出をながめると、ファッションのような積極的に「使う」お金が減っていく一方で、交通・通信費や、税金、保険料などの「出ていく」お金はじわじわと増えて続けている。そんな見方もできるかと思います。
圧迫感のある家計状況のなか、コロナ禍の影響でふと生まれた“余力”を、株などの投資に振り向け、家計の資産増加を願う……。いま、数十年来の活況に沸く株式市場に向けて、そんな生活者の思いが託されているのかもしれません。
◆レポート/三矢正浩(博報堂生活総合研究所 上席研究員)
参考情報
〇総務省「家計調査」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html
〇博報堂生活総合研究所「生活定点」
調査地域:首都40km圏、阪神30km圏
調査期間:1992年から偶数年5月に実施(2020年のみ6~7月)
調査対象:20~69歳の男女、2020年は2,597人
調査方法:訪問留置調査
https://seikatsusoken.jp/teiten/