加えて、FRBは、昨年から「平均株価目標」を取り入れており、一時的に物価目標を超えるインフレ率が実現されても、早期に緩和縮小には動かないことを明確に表明している。それが、先日の議会証言で改めて確認された格好だ。FRBは、いまのところ、足元の金利上昇については「経済再開や経済成長への市場の期待の表れだ」とし、特段の警戒感を示していないが、仮にこの先も今のようなハイペースで金利が上がるようなことがあれば、景気回復を図るFRBが黙ってはいないだろう。そのため、長期金利の上昇・高止まりは続くだろうが、最悪のシナリオでも2%よりは手前の水準(1.9%台)で一服するのではないかと考えられる。
ただ、株式市場については、これまでの動きの巻き戻し(アンワインド)などのリスクシナリオも想定して、短期的には高い変動率(ボランティリティー)に警戒しておいた方がいいだろう。米長期金利はすでにコロナショック前の1年ぶりの水準まで上昇している。また、これまでは期待インフレ率も上昇していたために実質金利の上昇は緩やかなものに留まっていたが、足元では期待インフレ率は高止まっており、名目金利の上昇ピッチにはついていけていない。
実質金利は依然マイナスであるが、急速にマイナス幅が縮まってきている。その実質金利のマイナス幅の縮小傾向に対して、これまでの株式市場はあまり大きく調整してきていなかったことを考えれば、調整が1日だけで終わると考えるのはやや時期尚早といえるか。この先、米長期金利は高くても2%未満、期待インフレ率は2%超の水準で高止まりすることを考えれば、実質金利は依然マイナスであることが想定され、株式の相対的な魅力はまだ高い。
しかし、2月半ばにバンク・オブ・アメリカ(BofA)が公表したグローバルファンドマネジャー調査では、現金比率が過去8年間で最低となる一方、株式・商品の配分は10年間で最高となっていた。先週末は金利上昇で債券や新興国通貨などが大きく売られる現象もみられた。足元の金利上昇を受けて、アンワインドの動きがこの先も広がるようであれば、売りが売りを呼ぶ悪い連鎖となるリスクもある。
しかし、昨年のコロナパンデミックの際には、ジャンク債(格付けが低いためデフォルトリスクが高い債券)の購入にまで踏み切ったFRBだ。仮にそのような事態になった場合、あまりにマーケットの動きが激しければ、実体経済への波及や金融システムリスクを警戒してFRBが策を講じる可能性もあろう。目先は米長期金利を含め相場全体が落ち着くのを見極めてから新規ポジションを構築したい。
物色動向としては、インフレリスクや金利高止まりへの警戒感からグロース株は総じて軟調継続が想定され、鉄鋼や非鉄金属など景気敏感の資源セクターが相対的には買われやすいだろう。今週は、中国での2月製造業PMI(購買担当者景況指数)のほか、米国で2月のISM製造業・非製造業景気指数、2月ADP全米雇用リポート、2月雇用統計など重要な経済指標が多く発表される。これらで、予想以上に強い数値が出た場合には、上記のインフレリスクなどを一層織り込む動きとなりやすく、物色動向としても、グロース売りの景気敏感・バリュー買いの様相が強まろう。
今週の主な国内外スケジュールは、3月1日に2月新車販売台数、中国2月財新製造業PMI、米国2月ISM製造業景気指数、2日に10-12月期法人企業統計、3日に米国2月ADP全米雇用リポート、米国2月ISM非製造業景気指数、4日に米国1月製造業受注、5日に米2月雇用統計などが予定されている。