田代尚機のチャイナ・リサーチ

株価乱高下の最大の要因、「アメリカ長期金利の上昇」は続くのか

FRBは金融政策の変更には消極的

 もっとも、足元のインフレ率(CPI上昇率、前年同月比)を見る限りでは上昇する気配は見られない。1月は1.4%で昨年12月と変わらず昨年9月以降、トレンドは発生していない。2018年6月、7月には2.9%まで上昇しているが、当時と比べたら現在の水準は充分低い。食品とエネルギーを除いたコア指数でみても、個人消費支出価格指数でみても、インフレ率が高まるような兆候は見られない。原油価格、銅価格など商品市況が上昇している中でも、“物価”は安定しているのだ。

 そもそも、FRB(米連邦準備制度理事会)は金融政策の変更には極めて消極的だ。パウエル議長は2月23、24日に行われた議会公聴会で、アメリカ経済への支援継続を改めて示唆している。長期金利の上昇については力強い経済見通しに対する確信の表れだと指摘している。

 FRBはリーマンショック以降、債券市場、株式市場の安定を最重要課題としている。だからこそ、金融政策の正常化、テーパリングを進められずにいる。もし、長期金利の上昇が放置できないレベルになりそうであれば、オペレーションを通じて短期金利を低めに誘導するなどイールドカーブを現在よりも強く操作することができる。必要ならば、量的緩和の再拡大といった方法で、もっと直接的に長期金利を抑えることもできよう。

 視点を変えれば、アメリカは財政赤字が深刻で、国債発行残高が多く、その消化は決して容易ではない。長期金利の上昇は、金融市場においてリーマンショック以上の大惨事を招きかねない。だから、FRBは全力で長期金利の上昇を止めようとするし、それができるだけのツールを持つはずだ。

 何だか安心してよいのかどうか、迷ってしまうような話だが、結論としては長期金利の上昇は当面は抑えられるのではないか、と予想される。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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