菅義偉・首相の長男・正剛氏ら東北新社幹部から7万円あまりのステーキ接待を受け、さらにNTTからも接待されていたことが週刊文春に報じられた山田真貴子・前内閣広報官が、病気を理由に辞任した。菅首相の懐刀と言われた山田氏が失脚した一方、安倍前政権で重用された“お友達官僚”は次々に栄職に収まっていた。
官邸官僚の筆頭である今井尚哉・元首相補佐官兼政務秘書官。通産省に入省後、2006年、第一次安倍政権時に首相秘書官に抜擢されると第二次安倍政権では、政策全般の調整役を担った。
菅政権発足以降は内閣官房参与となり、官邸の主要メンバーから外れたとみられていたが、今年に入りキヤノングローバル戦略研究所(政策研究を行なうシンクタンク)の研究主幹に就任。さらに3月初旬、三菱重工業の顧問就任が報じられた。
同じく第二次安倍政権で首相補佐官兼内閣広報官を務めた長谷川榮一氏(経産省出身)は菅政権発足と同時に退官した。が、昨年12月、「桜を見る会」前夜祭問題で安倍前首相が不起訴になった後に開かれた記者会見では司会を務め、退官後も安倍氏を支えた。その長谷川氏は今年1月1日、米大手投資ファンド「ブラックストーン・グループ」日本法人のシニア・アドバイザーに就任した。
古巣で“出戻り出世”を果たした官僚も。2019年1月から首相秘書官を務めた原和也氏は今年2月、埼玉県警本部長となった。警視庁のトップ「警視総監」へつながるエリートコースだ。政治ジャーナリストの伊藤惇夫氏が語る。
「この3人の場合は、安倍前首相からの『支えてくれてありがとう』という論功行賞でしょう。補佐官らは時には防波堤となり、“忖度”も行なう難しい職務です。無事こなしてくれた場合には、そのときの首相が自らのネットワークを使ってそれなりの処遇を用意することもあります」
今井氏、長谷川氏を受け入れた各社は前首相による“斡旋”を否定したうえで、「能力がある方としてお願いした」(キヤノングローバル戦略研究所広報担当)、「専門知識を評価した」(ブラックストーン・グループ・ジャパン広報担当者)と採用の理由を説明。原氏については、「人事は適材適所で行なわれている」(警察庁広報室)とのこと。
政権を投げ出した首相も、側近は放り出さなかったということか。
※週刊ポスト2021年3月19・26日号