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【日本株週間見通し】米長期金利の落ち着きで日経平均は強含むか

 16日から17日にかけて行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)および週末19日に開催される日銀金融政策決定会合だ。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、先に行われたウォールストリートジャーナル主催のイベントでのインタビューにおいて、既にその折上昇中だった米長期金利について一定の見解を示している。

 その際は、「(金利の急上昇については)注意を払うものだった」としながらも、ツイストオペ(短期債を売って長期債を買う)など長期金利の上昇を抑制する具体策には特段言及しなかった。これが失望感を誘う形で一時は再び長期金利が急伸し、日米の株式相場に短期的なショックをもたらしていた。

 このような背景から、既に、しばらくの間はFRBからは特段の具体策の発表はないだろうという市場コンセンサスが形成されつつあると考えられる。そのため、今回のFOMCはそこまでの大きな警戒イベントではないと考えられよう。むしろ、すでに一度期待を裏切られる形で期待値が下がっている分、何もなければ「やはりか」という程度の印象で市場は過敏な反応を示さず、反対に、具体策への言及などがあればポジティブサプライズとなって相場上昇に弾みをつける可能性がある。

 つまり、いずれにしろ、イベント通過に伴うあく抜け感から相場はポジティブに反応する可能性が高いのではないかと想定される。

 また、日銀金融政策決定会合についても大きなイベントにはなりにくいと思われる。今年に入ってからの日銀による上場投資信託(ETF)の買い入れ状況から、大方の予想では、ETFの買い入れ基準に変更があると考えられている。昨年3月の会合で、ETFの保有残高をそれまでの年間約6兆円増加させるペースから、年間約12兆円へと上限を変更した経緯がある。市場では、現状の買い入れペースから大きくかい離してしまった6兆円を撤廃すると同時に、ゼロから上限12兆円まで上下の幅を広げてセーフティーネットとしての柔軟な役割を強調するのではないかという観測が出ている。

 より保守的な見方としては、6兆円だけでなく12兆円も含めて金額枠が撤廃され、市場の動きに応じた柔軟性だけを強調するケースもあるが、どちらにしろ、これまでの買付状況の推移からある程度は織り込み済みと思われる。新方針の発表直後には一時的に相場への影響も考えられるが、あくまで短期的な要因にとどまるだろう。そのため、こちらも過度に警戒する必要はないと考える。

 そのほか、国内要因としては、そろそろ年度末に向けた機関投資家によるリバランスや、企業の政策保有株の圧縮といった需給要因も一巡してくる頃合いと想定される。直近の金利上昇と合わせて、こうした需給要因も、ハイテク・グロース株の調整要因になっていたと考えられていた。

 そのため、金利上昇の一服とともに、新年度入りを見越した新規ポジションの構築から、地合いに押されて過度に売られ過ぎた優良グロース銘柄への買い直しなどの動きも出てくる可能性があろう。そうした動きの兆しとして挙げられるのが、前述したエムスリーや日本電産の先週末にかけた動きともいえる。

 また、米バイデン政権が掲げる1.9兆ドルの大規模な追加経済対策も11日に成立し、早ければ今週から家計への1人最大1400ドルの現金支給が始まる予定だ。米個人投資家の懐が潤えば、再び人気グロース銘柄が動意づき、東京市場にも同様の動きが波及する可能性がありえよう。

 今年4月頃からは、前年比ベースでの物価指標の上振れが警戒されており、インフレ懸念による長期金利の上昇というリスクシナリオがなくなったわけではない。米国のブレークイーブン・インフレ率(期待インフレ率の指標)も足元で一段と上昇する動きなどを見せてきている。しかし、上述の背景から、一先ずは、直近に見られていた「バリュー(割安)買い・グロース売り」という単調な物色動向からは再び変化が生じるのではないだろうか。

 今週は、週前半に中国2月の鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資、米国の2月鉱工業生産、小売売上高などの経済指標も発表予定だ。中国関連指標が良好なものであれば、ファナックや安川電機<6506>などのFA関連株の一層の刺激材料にもなろう。

 今週の主な国内外スケジュールは、15日に1月機械受注、中国2月鉱工業生産、中国2月小売売上高、中国2月固定資産投資、16日に米国2月小売売上高、米国2月鉱工業生産、米国3月NAHB住宅市場指数、米国FOMC(~17日)、17日に2月貿易収支、米国パウエルFRB議長会見、米国2月住宅着工件数、18日に日銀金融政策決定会合(~19日)、米国3月フィラデルフィア連銀景気指数、19日に黒田日銀総裁会見などが予定されている。

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