2月末に発生したみずほ銀行のATMトラブルによって、利用者は大混乱に陥った。口座からの引き出しや送金、通帳記帳による家計管理などで利用することの多い中高年世代にとっては、銀行ATMは生活に不可欠なものであり、影響は甚大だ。
しかし、実は今回の障害の背景には、そうしたユーザーの利用法を大転換させようとする金融機関の思惑が見え隠れする。
みずほ銀行は、定期預金の口座を紙の通帳からデジタル通帳に切り替える作業を進めた結果、システムに過大な負荷がかかり、障害の一因になったと説明する。同行では、今年1月から紙の通帳を発行しない口座サービス(みずほe-口座)をスタートさせている。
同時に導入されたのが「通帳発行手数料」だ。1月18日以降に普通預金口座を新規開設した場合、通帳の発行や繰り越しごとに1冊1100円の手数料がかかる(70歳以上は対象外)。ファイナンシャルプランナーの森田悦子氏が指摘する。
「超低金利が長引き、顧客から集めた預金を企業に融資して収益をあげるビジネスモデルが成り立たなくなった銀行は、預金者に応分のコスト負担を求めるようになりました。“紙の通帳有料化”は象徴的な例で、他の銀行でも同様に手数料を増やす動きが広がっています」
使わない口座にカネがかかる
年度末が定年退職となる会社に勤めている人などは、退職金の入金のために口座を開設しようと考えたり、勧誘を受けたりする時期だけに、よく理解しておきたい。
三井住友銀行では、4月1日以降に新規開設した普通預金口座で、「紙の通帳」を使う場合、年間550円の手数料がかかる(18歳未満または75歳以上は対象外)。その新規口座でオンラインサービス「SMBCダイレクト」の利用登録をせずに2年以上入出金がなく、かつ残高が1万円未満だった場合は、年間1100円の手数料が発生する。
三菱UFJ銀行も、7月1日以降に新規開設する普通預金口座を対象に、2年以上利用がない場合、年間1320円の「未利用口座管理手数料」を徴収する方針だ。口座を使わず放置すると、手数料がかかるようになっていくのだ。