FRBは政策により短期金利を誘導することはできるが、長期金利の水準は主として市場が決めるものだ。市場が先走る形でインフレ懸念が一層強まり、米長期金利が更に上昇する可能性もある。その場合、現在は緩和政策の継続を強調しているFRBも政策方針の変更を迫られるかもしれない。
実際、もともとインフレ懸念で長期金利が上昇していることを受けて、インフレ抑制のための早期利上げ見通しが示されるのではないかという警戒があったわけだが、結局、緩和政策を強調しても景気回復を強めるとの見方から「インフレ期待→長期金利上昇」という動きが続いたわけで、何とも皮肉な話だ。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)による3月のグローバルファンドマネジャー調査では、いまや最大のテールリスクは「インフレ」と「長期金利の上昇」であり、新型コロナウイルスに取って代わっている。今後も期待インフレ率と米長期金利の動きを注視する必要があろう。
週次イベントとしては、米長期金利の上昇のきっかけにもなった米7年国債入札が25日(木)に予定されており、ここでの債券需給を見極めたい。また、大手金融機関の債券保有縮小の可能性が指摘されている、補完的レバレッジ比率(SLR)に関する条件緩和の延長についても、前日のFOMCでは回答が避けられ、近いうちに発表されることとなっている。こちらも債券需給に影響を及ぼすと考えられているため、警戒が必要である。
ここまで散々悲観的なことを書いてきたが、それでも、株式市場の先行きが暗いわけではない。米長期金利が上昇してるとはいっても、期待インフレ率を差し引いた実質金利はいまだマイナスで、この実質金利のマイナスは当面保たれる見込み。実質金利がマイナスである限りは、株式益回りと債券利回りの差であるイールドスプレッドの縮小もある程度は許容できると思われ、FRBの政策スタンスが現状のまま維持される限りは、各種アセットクラスの中での株式の相対的な魅力は劣らないだろう。
実際、米長期金利が1.75%まで上昇した直後の東京市場でも日経平均などは大きくは崩れず底堅く推移した。金利上昇に対する耐性は付いてきていると思われ、過度な悲観はまだ不要だろう。
物色動向としては、金利動向に敏感なグロース株などは避けた方が無難だろう。景気循環的な性格を併せもつ半導体を中心としたハイテク株などはまだしも、情報通信系グロース株は引き続き厳しい相場局面になると思われる。そうした中で、有望と考えられるのは、バリュエーション面での割高感も薄い景気敏感株と考える。今年の株式市場での揺るがない最大のテーマは「景気回復」だからだ。
実際、昨年秋以降しばらくは225銘柄で構成される日経平均の上昇が目立っていたが、ここにきて東証1部全体の値動きを示すTOPIXの上昇ぶりが顕著となっている。こうしたこところからも目先の対象とすべき投資対象が見えてこよう。中でも、足元の市場での最大懸念要素であるインフレリスクをヘッジできるセクターが好ましいだろう。具体的には、エネルギーや素材、金融あたりだ。
東証33業種では、鉱業、鉄鋼、化学、銀行あたりが相対的に他をアウトパフォームしそうである。また、3月の終わりに近づいてきたことで、配当や株主優待の権利取りを狙った動きも活発化すると予想される。上述したセクターには配当利回りや株主還元性向が高い銘柄が多いため、そうした観点からも注目されよう。
今週の主な国内外スケジュールは、22日に米国2月中古住宅販売件数、23日に米国2月新築住宅販売件数、24日に日銀金融政策決定会合議事要旨(1月20-21日開催分)、2月企業サービス価格指数、米国2月耐久財受注、25日にEU首脳会議(26日まで)、米国10-12月期GDP確報値、米国7年国債入札、26日に独3月Ifo景況感指数、米国2月個人所得・支出などが予定されている。