運転を妨げるほか、接触や事故につながる可能性の高い行為をする「あおり運転」が話題になることも多い。許されるべきではないこの危険行為に遭遇した場合、どう対処したら良いのか──。実際の相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
先日、運転をしていたら、後ろから来た車がパッシングをして追い抜いて行きました。その後、道をふさいで車を停止させていたので、仕方なく私も車を止めると、その人が車から降りてきました。そして、何かを怒鳴りながら私の方に詰め寄ってきて、ドアを蹴飛ばして戻って行きました。そのときの様子はドライブレコーダーに残っていますが、あおり運転の被害として警察に通報した方がよいのでしょうか。(39才・会社員)
【回答】
昨年6月、道路交通法が改正され、妨害運転(あおり運転)に対する罰則が創設されました(運転妨害罪)。一昨年、あおり運転をした男性の言動の一部始終が動画でネット配信されて大きな話題になりましたが、以前から似たようなことはあったと思います。
道交法では「ハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と、運転者の安全運転義務が定められています。しかし、やや抽象的なうえ、違反の罰則も3月以下の懲役または5万円以下の罰金で軽微です。頻発する危険なあおり運転を取り締まるには不十分でした。
改正法は10の危険運転行為を妨害運転と定め、違反者を3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する、という厳しい内容になっています。しかし、これらの行為をほかの自動車の通行を妨害する目的で、妨害される自動車の道路上の交通に危険を生じさせるおそれのある方法でしたことが要件です。