50代半ばはライフスタイルを見直す好機だ。たとえば老親の介護が現実味を帯びてくる世代でもあるだろう。実家の家財を処分・整理することも検討したい。70代男性はこう振り返る。
「60歳の時、母親と実家で同居するのを機会にいらない物を処分しましたが、想像以上に大変でした。現役中から先を見越してやっておけばよかったと思います」
男性にとって、実家の不用品処分は「親との戦い」だったという。
「実家に大量にあったのは紙袋や包装紙など、『いつか使うから』と残してあるゴミでした。使っていない家具類を粗大ゴミで出す時は『やめてくれ』と泣き叫ばれた。片付けが終わるまでに、2人ともヘトヘトになってしまいました」(同前)
実家の片付けのポイントについて、生前整理アドバイザーの水野久美子氏はこう助言する。
「親のものを処分する場合は、まず本人に納得してもらうこと。『いらないでしょ』は禁句です。捨てない理由が『もったいない』なのか『本当に大切』なのかを先に確認すると良いでしょう。『もったいない』ので取ってあるものは、捨てるのではなく中古品業者に売却してお金に換えるのがお勧めです」
加えて、50代半ばは周囲の人間関係を見直す時でもあるという。心理学者の諸富祥彦・明治大学教授が解説する。
「50代のうちに、自らの意思で人間関係を整理していくことが大切です。60歳を過ぎると、死別や退職などで、そうは望まなくても少しずつ人間関係が切れていきます。自らの選択とは関係なく孤独になっていくと、精神的なショックは大きいし、高齢であれば認知症などにつながるリスクもある。そうなる前に、“面倒な付き合いは避けよう”“自分ひとりで過ごせる時間を作ろう”と考えて、惰性で続けている関係を整理してもいいのではないか」
とりわけ男性は、60歳以降に長く勤めた会社を退職すると、そこで初めて“仕事関係以外の知り合いがほとんどいない”という現実に突き当たって、ショックを受けるケースが多い。50代後半のうちから、自分の人間関係を冷静に見つめ直しておくことが重要になるわけだ。