その煩雑な手続きから事前にあまり考えたくないという人も多いのが相続の問題。生前に親と話しておければいいが、切り出し難いテーマでもある。
では実際の手続きにはどういったものがあるのか。相続の手順でまず必要な遺言書を探す作業を、事前に確認しておきたい。公正証書遺言がある場合は公証役場で遺言書の有無を探してもらえるが、親子の話し合いで自筆証書遺言を作成済みの場合は、保管場所が自宅や貸金庫などか、法務局かでその後の対応が分かれる。
2020年7月からは自筆証書遺言を法務局に預ける制度が始まっている。これを利用すると家庭裁判所で遺言書の検認をしてもらう手間を省くことができる。
実際の相続手続きに入ると、まず相続人の確認を行なうが、続いて欠かせないのが「法定相続情報一覧図」の作成だ。これは2017年5月に導入された法定相続情報証明制度の利用時に使う書類。書式は法務局のホームページで入手できる。
まず、被相続人(故人)の最後の住所や本籍、生年月日や死亡年月日を記入した「法定相続情報」を作成。相続人全員の氏名や生年月日などを加えて、一覧図にする。この図と被相続人や相続人全員の戸籍謄本などを法務局に提出すると、「法定相続情報一覧図の写し」が交付される。
これを用意しておけば、金融機関や役所で手続きが必要だった何十通もの戸籍関係の書類を写し1枚で済ませることができる。
相続財産の確認が済んだら、親に負債がないかどうか改めて確認したい。生前に財産目録を作る際、親に借金の有無も記載してもらっておく。借金が多い場合は親の居住地の家庭裁判所から相続放棄申述書の書式を取り寄せ作成・提出する。親の死後3か月を過ぎると相続放棄できず、借金を相続人が肩代わりしなければいけなくなるので注意が必要だ。
遺言書がない場合は相続人全員の協議で遺産分割協議書を作成し、相続税の申告・納付を行なう。相続税は現金での納付が原則で、1日でも期限を過ぎると延滞税が発生するので気を付けたい。
親子で話し合う場を設けるタイミングが早いか遅いかで、「いずれ訪れるその時」の明暗が分かれる
※週刊ポスト2021年4月16・23日号