もともと加藤製作所では、土日の労働力確保のために60歳以上の人材確保を進めたが、徐々に平日にフルタイムで働きたいという希望者が増えてきた。前出の広報担当者が言う。
「歳を重ねても働きやすいように、工場内のバリアフリー化や冷暖房設備の充実といった設備投資をしました。今では114人の社員中、60歳以上が半数を占めます」
72歳になる松山さんの場合、出社は月の半分に調整し、「在職老齢年金」を満額受け取りながら働いている。
「60~64歳は、『高年齢雇用継続給付金』をもらいながら働いていました。働く時間は現役時代より減ったけど、働けるうちはずっと働きたい」(松山さん)
後輩や若手の社員からは、「師匠」と呼ばれて慕われている。
「昔の部下が出世して自分の上司になるのは、嬉しいね。部下に追い抜かれるのを嫌がる人もいるけど、そんなんじゃダメ。喜ばないと。今、私は役職がないけど、技術者としては私のほうが先輩だから、みんなが『師匠』と呼んでくれる。そんな職場の温かさや居心地の良さも好きでね。長く働くには、そういう人間関係が大切だろうね」
※週刊ポスト2021年4月16・23日号