4月も中旬に差し掛かり、新録の季節がやってきた。東京では最高気温が23℃を超える日もあり、5月中旬並みの陽気に汗ばむほど。春を通り越して初夏の陽気と言えるが、気象予報士の田家康さんによると、今年は例年より早く夏が来るという。今年の夏の到来とその季節感ついて、田家さんが解説する。
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今年3月の東京の月平均気温は12.8℃と、1876年以来の観測史上で最も高かった。昨年はやや気温が低い傾向にあったこともあるが、昨年4月の月平均と同じ気温となっており、昨年と比べて暖かくなるのが1か月早まったことになる。東京だけでなく、日本全体の平均気温も統計開始以来、3月としては最も高かった。
早春の天気の特徴として、寒い時期と暖かい時期が数日おきに交互にやってくる状況を表現した「三寒四温」がよく喩えられる。ところが、今年の3月は「三寒」が無く、過去100年間の温暖化傾向を差し引いても突出して高かった。気象予報士仲間や気象学者の間では、こんな年はかつてなかったと話題になっている。
気温上昇の理由は温暖化と思いがちだが、実は直接的な要因は別にある。北太平洋の高気圧が発達し、その西縁を暖かく湿った空気が日本列島に流れ込んだからだ。また、日本の上空を西から東へと吹くジェット気流が平年よりも北側に寄せられ、シベリア由来の冷たい寒気が日本列島まで南下するのを遮った。このため、日本列島を含む東アジアに暖かい空気が集まることとなったのだ。
この調子で行けば、今年の夏は例年より早く来ることが予想される。3月24日に発表された気象庁の「3か月予報」によれば、太平洋高気圧の日本列島に向けた張り出しは例年よりも強く、5月から6 月の気温は全国的に高め、6月の降水量は東日本以南で多めと出ている。気温が高い一方で、梅雨期の降水も多そうだ。
そのため今年は、春・夏・秋・冬と3か月毎に区切られている暦の上での季節感とのズレを強く感じるだろう。気象予報士仲間からも、地球温暖化が進展する近年において、春と秋が短くなっているという見解を多く聞く。梅雨が明けてから夏到来とも言われるが、梅雨期よりも前から強い日差しの日も年々増えている。