父が死んだ後、母が死んだ後には、さまざまなトラブルの種だらけ。だが、親子で情報を共有し、書類や資料を用意しておくことで、問題を回避できる。
親が「ひとり」になった時、様々なトラブルを回避するためには、事前に親子でよく話し合っておくことが重要になる。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏が解説する。
「同居をしないのであれば、親が元気なうちに“老後生活のロードマップ”を話し合っておきましょう。死ぬまで自宅で暮らしたいのか、老人ホームに入るならどのくらいの介護度になった時に、どんな施設に入りたいのかといった希望を聞いておくのです。それにあたっては、子が親の『お金』について把握しておくことが重要になります」
具体的には、親の預金通帳や年金振込通知書から、どの口座にいくらお金があって、年金はいくら振り込まれるのかといった情報を共有していく。
「親の介護が必要になったり、判断力が衰えてきたりした時に“どの口座のどのお金を使うか”を子供たちが知っておくことが重要です。元気なうちは親も自分で財産を管理しますから、暗証番号を書いた紙の保管場所を聞いておくといった方法もあります。子が遠方に住んでいる場合は、家族が預貯金をおろせるように銀行で代理人カードを作っておいてもらうのもよいでしょう」(太田氏)
親の判断能力が落ちた時の備えとしては、任意後見制度や家族信託などの制度を活用する選択肢もある。家庭裁判所で手続きをする任意後見は、親が認知症になった時の財産管理などを任意後見人として選任された子が行なえるように申し立てておく制度だ。
「とくに兄弟の仲があまりよくない場合、任意後見制度を使うことで、あらかじめ親の財産管理の方法を決めておけるので有効だと考えられます。
親が不動産を持っていて、介護費が必要になった場合に子が現金化することを考えているのであれば、家族信託の利用を検討してもいいでしょう。失敗しないように、弁護士など専門家に相談するとよいです」(太田氏)
※週刊ポスト2021年4月30日号