男性は、担当のケアマネジャーからこう告げられたという。
「『入浴や食事の介助などの“身体介護”はOKだが“生活援助”は受けられない』と言われました。家族が同居していると、炊事や洗濯、掃除など利用者の体に触れずに身の回りを世話する『生活援助』のサービスは原則的に受けられないそうで、結局、妻がパートを辞めて付きっきりで介護をすることに。パート仲間に愚痴ることもできなくなり、妻はストレスと不満だらけで夫婦仲も冷え切っています」
家族に迷惑をかけたくないと思っていても、その願いを実現することは容易ではない。
都内の会社員(59)の妻(55)は乳がんが骨盤転移し、トイレ介助が必要だが、家族は困難に直面している。
「介護保険サービスを使えるのは原則65歳からで、50代の妻は介護保険が使えませんでした。まだ高校生の娘も不安で眠れなくなっている。家族のことを考えれば、私が仕事を辞めるわけにもいかず目の前が真っ暗になりました」
訪問診療を行なう心越クリニック院長の岩間洋亮氏は、「とにかく、介護については家族で抱え込まず、公的サービスをフル活用するのが重要」と指摘する。
「まずは地域包括支援センターに相談して、介護認定を得てケアマネに相談する(別掲表)。65歳未満の場合、『重篤ながん』など特定疾病の認定が必要。自治体の地域包括支援センターに相談すると訪問医などを紹介してくれて、認定作業を手伝ってくれるケースもあります」
※週刊ポスト2021年5月7・14日号