家族に迷惑をかけない死に方をしたい――歳を重ねるほどに多くの人に共通する願いだろう。しかし、それを実現するのは思っている以上に困難が伴う。介護の負担や認知症による不都合、亡くなった後の相続で子世代に大きな損失や禍根を残すケースも少なくない。
親の死後、財産を整理して子供が遺産相続の手続きをしなければならない。現在は高齢単身者世帯が増え、1990年と比較して3倍以上、約630万世帯に広がった(『日本の世帯数の将来推計2018年』)。そのため、離れて暮らす親の財産を子供が把握していないケースが多い。
どのような“財産の残し方”が家族に迷惑をかけるのか。
「80代の母が他界し、遺品整理をしていたら請求書の山が出てきました……」。そう語るのは、都内在住の60代男性。借家でひとり暮らしだった母親には、積み重なった借金があった。
「クレジットカード会社に問い合わせると、総額100万円を超える借金があることが判明。年金暮らしの母は生活費が不足して、月に1万~2万円のキャッシングを繰り返していました。リボ払いでの買い物代も膨らみ、返せなくなっていたようです。離れて暮らす私に相談しにくかったのでしょうが、母の借金を知った時は衝撃と悲しみを覚えました」
母親の遺産はほとんどなく、残ったのは借金ばかり。男性は相続放棄に踏み切った。