家のどこかで現金が眠っている可能性も
生活費不足から小さな借金を積み重ねる高齢者は少なくない。こうしたマイナスの遺産も相続財産になるのだ。
また、借金以外にもトラブルの種はある。元気だった80代の母親が急死した元教員の60代男性が振り返る。
「残された80代の父は家のことをすべて母に任せていて、通帳やキャッシュカード、印鑑がどこにあるかわからず、どの生命保険に入っているかも不明でした。慌てた家族全員で家中を探し、土地の権利書や保険証書は見つけましたが、現金や預金類は仏壇の中まで調べても出てこなかった。取引があったと思われる近隣の銀行や郵便局に問い合わせてようやく複数の口座が判明し、残高の処理や解約に奔走しました。
ただし、まだ見つかっていない“へそくり口座”があるかもしれない。家のどこかで現金が眠っている可能性もあるなんて、本当にバカバカしい」
親が亡くなったのち、資産内容の把握に四苦八苦するケースは少なくない。夢相続代表取締役で相続実務士の曽根惠子氏が指摘する。
「1000万円までしか預金が保護されないペイオフの解禁を経験した世代は、複数の金融機関に分散して預金するケースが多い。中には10行以上に預ける人もいますが、万が一の時にどの銀行に預けたかわからなくなったり、相続がスムーズにいかなくなるので、金融資産はなるべく少ない口座にまとめておくべきです。生命保険の証書などの重要書類もまとめて保管し、一式をまとめた目録を作っておけば、残された子供に迷惑がかかりません」
※週刊ポスト2021年5月7・14日号