飲食店はコロナ感染予防として様々な対策を講じながら営業している。消毒液や飛沫防止パネル設置など、感染対策にかかる費用もばかにならないだろう。しかしコロナによる景気不安で飲食店も簡単には「値上げ」できない。飲食店の中には「感染症対策料」の名目で会計に追加するところもあるようだが、こうした徴収は法的に問題ないのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
感染拡大に注意を払いながら、友人たちと居酒屋で早い夕食を囲んだときのこと。会計の際、伝票を見たら「感染症対策料」の名目で60円が計上されていました。従業員の説明では消毒液などもタダじゃないので、ということでしたが、腑に落ちません。この60円の「感染症対策料」は法的にアリなんですか。
【回答】
客が店を利用する関係は、両者間の契約に基づいています。居酒屋で食事するのも同様です。契約は申し込みと、これに対する承諾という双方の意思の合致が必要で、居酒屋では食事や酒に付随するサービスを提供しますが、中心は料理や酒の売買となり、代金も注文品単位で計算されるのが普通です。
注文品については、明確に契約が成立しているので、注文した品が出されれば、その代金を支払う義務があります。居酒屋だと、酒を頼めば、注文しなくても、お通しが出て、代金に加算されますが、モメることはありません。これは店と客との間で、お通しは酒代に含まれるという合意が暗黙のうちに成立しているからです。
クラブやバーでは、席に着いた時点でテーブルチャージが発生することもあります。常連であれば、わかっていることでもあり、問題は起きません。たとえ知らない客でも、クラブやバーで無粋と思われたくないため、テーブルチャージを支払うのが普通でしょう。