“ゴミ出し”がご近所トラブルに発展するケースも少なくない。「可燃・不燃などの分別がされていない」「前日にゴミ出しされて迷惑」など原因は様々。中には「ゴミ袋を勝手に開ける人」までいるという……。捨てたゴミでも中身を見られることに良い気分はしない。果たしてこのような行為には、どう対処できるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
私の住むマンションのゴミ集積所で近所のおばさんが、ひとつひとつゴミ袋を開け、中身を確認。他の住人が注意すると「分別できているか確認している」との返答。マンション側では、そんな依頼をしていませんし、覗き趣味としか思えません。おばさんの「ゴミ袋開け行動」を法的に取り締まれませんか。
【回答】
捨てたゴミには経済的価値はなく、放棄したので所有権も失っています。持ち去られても、原則文句はいえません。しかし、だからといって、出したゴミを見られるのは嫌なものです。そこには日々の暮らしをうかがい知れる様々なものが詰まっているからです。
ゴミ袋に名前がなくても、封筒などがあれば、宛名からゴミを出した人が特定されます。種類によりわかる私生活のゴミは、特定の個人に関する情報です。個人情報を理由なく他人に知られるのは不快であるだけでなく、不安も増長させます。他人の生活を覗き込んで、困惑させることはプライバシーの侵害であり、調査を受忍しなければならないような正当な理由がない限り、不法行為になります。
おばさんはゴミの分別を調べるということですが、収集の責任がある役所の職員や依嘱された清掃作業員などが、ゴミ分別の調査のために業務として行なっているわけではありません。あなたのマンション住民のゴミ分別違反の程度がひどく、近所で困っているというような状況であれば別ですが、そうでなければ、仮におばさんの善意を信じるとしても、他人の私生活を覗き込む正当な理由があるとはいえません。ましてや覗き趣味でゴミ袋を開けるのは、明らかなプライバシー侵害です。