「悪い友と辻風には出会うな」という言葉があるように、歳を重ねたら「友人」とのかかわり方にも慎重さが求められる。茶飲み友達のつもりが実は“毒友”だったという人たちの失敗談は多数ある。
定年を機に都内の自宅を売却、故郷にUターンして妻と実母と3人で暮らし始めた70歳男性は2年前、地元のスポーツクラブで元飲食店経営のA氏(72)と出会い、付き合いの幅が広がったという。
「初めは釣りや競馬など共通の趣味の話で盛り上がりました。すでに店を畳んでいたA氏ですが、周囲には同世代の友人がたくさんいて、カラオケやボウリングなどの遊び仲間に加えてもらいました」
そう語る男性が、A氏のルーズな性格を知るのに時間は掛からなかった。
「喫茶店などの支払いでは、『細かいのないから出しておいて』と言い、飲みに行けば『年金たっぷりもらっているんだから、今日は××さんの奢りね』とたかられることもありました」
最初は「まあいいか」と受け流していたが、図々しさはエスカレート。
「買い物の足代わりに『車を出して』は日常茶飯事。貸したゴルフクラブを壊された時も、『わざとじゃない』と逆ギレする始末です。それで連絡を断ったのですが、ボス的存在のA氏とこじれたことで他の仲間からも避けられるようになり、スポーツクラブでも誰からも話しかけられなくなりました」
老後問題に詳しいファイナンシャルプランナーの鴇巣雅一氏が言う。
「定年後、会社の人間関係を離れた孤立感から『友達を作らなければ』と焦り、対人関係の“距離感”を見誤ることは往々にしてあります」