定年退職や子供の独立を機に、ボランティアで地域活動に参加することが奨励されている風潮がある。
とくに男性には「会社以外のつながりができる」ことが利点としてアピールされる。各自治体でも「地域デビュー」を後押しする取り組みが盛んだが、健康維持や生きがいにつながると信じて始めた活動が悲劇を招くこともある。都内在住の68歳男性が語る。
「3年前に退職後、ゴミ拾いや運動会などの地域活動に積極的に参加するようになりました。それまで知らなかった地域の事情や人間関係が見え、面白さを感じていたのですが……」
その後、「形だけだから」と請われて町会役員に名を連ねたことで、潮目が変わる。出席を求められる会合や行事が増え、近隣町会の冠婚葬祭にも引っ張り出されるようになった。負担は想像以上だったという。
「落ち着いたらアルバイトを始めたかったけど、それどころじゃない。しんどいのは、台風など災害時の避難所設営や、夏休み中の防犯パトロール。ある時、タバコを吸っている中学生を注意したら、『おっさん、××の爺さんだろ?』と孫娘の名前を出されてドキッとしました。娘夫婦からは『私たちをトラブルに巻き込まないで!』と咎められるし、徒労感ばかりです」(同前)
「余計なことはしないで」
退職後、居住マンションの管理組合理事長を買って出た66歳男性も、後悔しているという。
「戸数は50未満でそれほど多くないし、妻との終の棲家なので『自ら役割を果たそう』と。でも、フタを開けたらトラブルだらけです」
一体、何があったのか。
「築20年以上で住人が高齢化し、孤独死が発生したんです。警察や管理業者と解錠に立ち会わされた時は、悲惨な現場を目の当たりにして卒倒しそうになった。また、共益費滞納の督促も理事長の仕事。再三の督促に応じない滞納者宅を訪ね、逆上され玄関先で首を絞められたこともある」