高齢世代の相続準備では「子供のため」と考えた結果、様々な失敗につながることがある。例えば自宅を売却して現金化することで相続しやすいようにして、子供の近くの賃貸マンションに住もうと考え「売却を急いだあまり、安値で手放してしまった」といったケースは少なくない。
逆に、考えるべきは“この家に住み続けるためにはどうするか”である。歳を重ねても住みやすいように段差をなくしたり、手すりをつけたりするリフォームが必要になる。そうした際に使える制度を知っておきたい。
ACCESS税理士・不動産鑑定士事務所代表の植崎紳矢氏が言う。
「たとえば、住宅特定改修特別税額控除を使えばリフォーム代金の10%が税額控除されます。所得が多い人のほうがメリットは大きいので、働いて収入があるうちにバリアフリーに改修し、老後に備えるのも手です。制度によって対象となるリフォーム内容や上限額などが異なるので、事前に情報を収集しておきましょう」
別掲の表は、人生の後半戦で夫婦が活用できる主な制度をまとめたものだ。生活の利便性を上げるための住み替えなども想定されるので、ダウンサイジングして新たに住宅を購入する際に住まい給付金、住宅借入金等特別控除などが使える局面もあるはずだ。
「貯蓄が少なくて夫婦の老後生活に不安がある場合、『子供に不動産を残す必要がない』と決めてしまえば、リバースモーゲージという選択肢もある。自宅を担保にして、そこに住み続けながら融資を受ける高齢者世帯ローンで、所有者が亡くなったら自宅を売却して返済にあてる仕組みです。
注意点としては、不動産が夫名義の場合、夫が先に亡くなると自宅が売却され、妻は住めなくなってしまうことなどがあります。使い始める前に、複数あるリスクにどう対応するか、専門家を交えて検討するのがよいでしょう」(植崎氏)
※週刊ポスト2021年6月4日号