相続税対策は富裕層だけの話と思われていたが、課税強化によって対象が広がり、“専門家”による相続対策セミナーなども活況を呈している。ただ、「ややこしい相続税の申告は、お金を払ってプロの税理士に任せれば安心だ」と考えているとしたら、ちょっと待ってほしい。
お金を払ったうえに、「相続税で大損」するリスクがあるのだ。円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏によると「実は相続税法に詳しい税理士は少なく、そうした税理士に任せっぱなしにして割高な相続税を払っているケースはとても多い」という。
橘氏が真っ先に指摘するのは、「小規模宅地等の特例」の適用ミスだ。同制度は、被相続人(故人)が自宅として使っていた土地(100坪まで)を配偶者か同居親族(子供など)が相続する場合、土地の評価額を80%減額できるというもの。この特例の適用を受ける際に、多くの税理士が間違えるという。
「配偶者はもともと、軽減措置により相続財産1億6000万円までは無税になります。小規模宅地等の特例を適用するのであれば、自宅の土地は配偶者ではなく、あえて同居の子供らに相続させたほうが税を圧縮できる場合もあります。不慣れな税理士はそこを間違えやすい」(同前)
自宅の土地を配偶者が相続するか、子供が相続して特例適用するかで、納税額に数百万円の差が出ることもあるという。
それだけではない。
「相続の対象となる土地は、形が悪い不整形地や墓地などの隣接地、上空を高圧電線が通っている土地などの場合、最大50%近く評価額を下げられることがあります。本来、不動産鑑定士などの専門家に依頼すべきところ、それをしないで割高な申告をしてしまう税理士がいるのです」(同前)