身内が亡くなると、残された家族は相続の手続きなどで様々な書類や資料を用意しなくてはならない。それがどこにあるか分からないとなると、手間がかかるうえに、見つからなければ大きな“損失”となる。
元公務員の65歳男性は、2年前に父を亡くした時のことを振り返りながらこう嘆く。
「母はずいぶん前に亡くなっていたのですが、オヤジは何をどこに保管していたのか、メモひとつ残していなかった。泥棒が入るのを用心していたのか知りませんが、通帳やキャッシュカード、印鑑なども分かりやすいところには全く見当たらない。
遺産が総額でいくらなのかも把握できないし、“お前たちを受取人にした生命保険に入っているから”という話もしていたけど、保険証券もない。兄弟で家中の引き出しや仏壇の裏まで探し回って、土地の権利証だけは出てきたけど、預金類や保険証券は見つからなかった。銀行に電話して口座を探すなど、大変な手間がかかったし、保険については早々に諦めてしまいました」
妻が先に亡くなってしまっていると、とりわけ“財産や必要書類が見つからない”ということが起こりがちだという。72歳の元会社役員はこう話す。
「父親が亡くなった後、1年経ってから本棚の後ろに隠していた金地金が見つかったんです。相続税の申告は済ませた後だったから、何か手続きが必要かを調べるのも面倒だったし、この調子だと恐らく見つけられていない遺産がどこかにあるのでしょうね……」
相続・終活コンサルタントの明石久美氏はこう話す。
「いわゆる“タンス預金”をゼロから探すのは非常に困難です。食器棚の間とか、下駄箱とか、残された家族が考えもしなかった場所から出てくるという話がよくあります。着られなくなった服とか、不要なものはたくさん残っているのに、相続の手続きで必要なものが見つからないことも多い」