例年に比べて長引く可能性が指摘されている今年の梅雨。雨の日が増えると気になるのが、毎年各地で発生する洪水や土砂崩れなどの災害だ。今年5月に改正された「災害対策基本法」のポイントを押さえながら、知っておきたい対策法について、気象予報士の田家康さんが解説する。
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災害対策基本法が一部改正され、5月20日から新たな「避難情報に関するガイドライン」が公表された。なぜ、月初でもない中途半端な日付での改正になったかというと、梅雨に入り、集中豪雨などの気象災害が増えるとの見方があるためだ。もともと、全国各地の河川事務所の多くが、山岳の雪解け水、集中豪雨(梅雨)や台風の到来を勘案し、川の水が増水しやすい時期として5月半ばから10月を設定しており、この時期に間に合わせたタイミングと言える。
今回の改正の最も重要な変更点は、災害の際に市町村が住民に出す1~5の警戒レベルのうち、「4」の「避難勧告」と「避難指示」が「避難指示」に一本化され、分かりやすくなったこと。これまでは、「避難勧告」と「避難指示」が混在し、両者は避難する際の時間的切迫感の違いを意味していたが、こうした区分が廃止された。
さらに、レベル「3」においても、これまで「避難準備・高齢者等避難開始」とされていたのが、「高齢者等避難」と明確に定められた。内閣府は、今後はレベル「4」が発令されたら、レベル「5」の発令を待つことなく必ず避難するよう促している。
ここで考えたいのが、気象庁が発表する「警報・注意報」と、今回定められた自治体が発表する「警戒レベル」をそれぞれどう解釈すべきかという点だ。気象予報官として長年の実績があり、多くの気象予報士から崇敬されている永澤義嗣さんの著書『気象予報と防災──予報官の道』(中公新書)によれば、「警報」とは「避難を考えるべき準備段階に入った」ことを意味するものだという。また、自治体の避難情報や住民の避難行動の目安になることも意識していると解説している。
これに則れば、気象庁の「大雨警報」と「洪水警報」は、自治体の警戒レベルで言えば「3」、「高潮警報」は概ね警戒レベル「4」に相当すると覚えておくと良いだろう。また「注意報」は、警報の前段階としての役割とともに、避難を必要とするほどでもない軽微な災害の可能性を注意喚起するという2つの意味を持っているため、自治体の警戒レベルで言えば「2」程度に当てはまる。