毎日何気なく目にする天気予報。だが、通勤や移動、旅行の計画から健康状態まで、天候の変化は日々の暮らしに大きく影響するもの。気象予報士の田家康さんが、旬なテーマをピックアップし、知って得する天気のお役立ち情報をわかりやすく伝える。今回は、傘の忘れ物と梅雨時期の気象予測について。
* * *
梅雨の時期は傘の忘れ物が急増する。一日中雨が降っていれば手に握った傘を忘れることは少ないが、途中で雨が止んで傘が荷物になったり、電車から降りる時など、うっかり置き忘れる人は多い。JR東日本によれば、傘の忘れ物は年間200万本を超え、近年は増加傾向にあるという。あまりに増えすぎて、同社は2017年から傘の保存期間をそれまでの3か月から1か月へと短縮したほどだ。傘の忘れ物を防ぐべく、雨がいつ止むかをどうやって判断すればよいのだろうか。
多くの人がスマホやテレビなどで日々目にする天気予報のほとんどは、気象庁がコンピューターで計算したものがベースになっている。計算に使われる気象モデルはいくつかあるが、基本的には地球全体の大気の状態をカバーする「全球モデル」によって、各都道府県の天気を予測し配信している。配信時間は、毎日5時・11時・17時の3回だ。
コンピューターによる天気予報の精度は年々向上しており、2日程度先までの天気の移り変わりなら、大きく間違えることはほとんどない。「朝は曇っていても日中気温が上がれば晴れて暑くなる」、「夕方から梅雨前線が伸びてきて夜半には雨が降る」といった予報はほぼ的中すると考えていい。
ところが、今降っている雨がいつ頃止むのかといった、3時間以内の天気を判断したい時には、コンピューター予測は向かない。それよりも、現在降っている「雨の分布」を見る方が有効だ。大気中の風は、地球の自転の影響から西から東へと流れているため、風を受けた雨雲の動きから今後の雨の降り方を予想する方が確実なのだ。