新型コロナウイルス感染の発生から、2回目の夏を迎えようとしている昨今。ワクチン接種も徐々に進んではいますが、緊急事態宣言が継続している地域もあるなど、油断のできない状況が依然続いています。コロナ禍によって生活を取り巻く様々な環境が変化しましたが、「キャッシュレス決済の浸透」もそのひとつでしょう。
博報堂生活総合研究所が行っている「新型コロナウイルスに関する生活者調査」をみると、コロナ禍の発生を受けて「できるだけキャッシュレスで支払うようにしている」という生活者は65.7%(2021年5月調査)。さらに、今後コロナ禍が収束したとしても「できるだけキャッシュレスで支払うようにする」と考えている人は69.1%にのぼります。
コロナ禍以前から、様々なキャッシュレス決済サービスが登場していたことに加えて、コロナの感染拡大に伴い、現金のやりとりによる「接触」を避けたい気持ちが強まったことが、上記の結果に現れているように感じます。
一方で、上記調査にはちょっと気になる部分も。調査を始めた2020年から「できるだけキャッシュレスで支払うようにしている」の回答を時系列でみると、毎月の数値は概ね6割台で推移しています。コロナ禍の脅威が続いていることを考えれば、数値が徐々に右肩上がりになってもよさそうなものですが、実態はほぼ横ばい状態が続いているのです。
ここから推察されるのは、コロナ禍などの切迫した状況下にあっても、「キャッシュレスには消極的」という層が一定数(調査からは3割強ほど)存在するのではないか、ということです。
国の政策としては、目下のコロナ対策のみならず、経済活性化の狙いもあり、キャッシュレス化を推進する動きが数年前から続いています。とはいえ、容易にはキャッシュレス化に向かわない層の存在もうかがえる今の状況。この先、日本社会がさらにキャッシュレス化を進めていくにあたり、何がポイントになってくるのか。その手がかりを得るべく、夫と妻が「現金派」と「キャッシュレス派」に分かれているという都内在住の30代夫婦に話を聞きました。