――他にも何か理由がありますか?
Mさん:クレジットカードはまだしも、モバイル決済に関しては、私ちょっと機械が苦手なので、操作にもたついたりして、レジの人や後ろのお客さんを待たせてしまったら嫌だなと思う気持ちもあります。使うためには専用のアプリが必要だと思うんですけど、スマホのアプリをあんまり増やしたくないし、使うたびに自分の情報が取られることにもちょっと抵抗を感じます。
――キャッシュレス決済のポイントや還元を利用して、うまく家計のやりくりをしている人たちもいますが。
Mさん:そういうお得な仕組みやキャンペーンがあっても、誘惑に乗る気持ちは湧いてこないんですよね。職場の同僚でも「還元されたポイントを使ってランチを食べた」なんて話している人もいますが、「あ、そうなんだ」くらいにしか感じません。心の中で「自分には関係ないことだ」と線引きしているというか……。現金を使ってやりくりするのが、自分には一番合っていると分かっているので。
――今後Mさんがキャッシュレスに興味を持つとしたら、何がきっかけでしょうか?
Mさん:うーん。まさに今、子育てに追われていることもあり、「子育てママに~」とか、自分のライフステージに即したキャッシュレスのメリット情報だったら、気になるかもしれません。
――なるほど。ちなみに、そんなMさんから見て、キャッシュレス派に変わったYさんはどう映りますか?
Mさん:すごいなと思う反面、正直、ちょっと冷めた目で見ている部分もありますね。「そんな不確かなものをなんで信じるの?」と思いますし、私をそっちの陣営に引き入れようと勧誘するのはやめてほしいです(笑)。
Yさん:そんなふうに思われているとは知りませんでした(笑)。いざやってみれば便利なんですけどね。
――現金派・キャッシュレス派の違いが夫婦仲に影響しないように祈っております。どうもありがとうございました!
現金派を動かすカギは付加価値を持たせることか
いかがでしょうか。元々は「現金派」のお二人ですが、今ではだいぶ違う考え方になったようです。
夫のYさんは、コロナ禍で利用店舗が変わったことと、非接触意識が高まってセルフレジを利用したことがきっかけとなり、キャッシュレス決済が習慣化されました。そこに「確定申告が楽になる」という思わぬ課題解決が加わったことで、一気に気持ちがキャッシュレスに傾いた様子が見てとれます。
一方で妻のMさんは、コロナ感染を気にはしつつも、キャッシュレスという実体のないお金に不確かさを感じる気持ちは強く、「自分には現金が向いている」という信念を崩すには至っていません。ポイント還元など金銭的なメリットにも関心が薄く、態度を変えるにはかなりハードルが高そうです。
ただ、Mさんのように、現金に対して「モノとして確かにあること」や「目に見える形で管理できること」に価値を感じる人は、案外多いのではないでしょうか。また、家計管理や節約術について情報発信しているブログやSNSを見ると、「封筒やケースを使って、現金を用途別に小分けにして管理する」ことを勧めているものも多く、これらの情報も「現金派」意識への後押しになっているように感じます。
Mさんは、「子育てママなど自分のライフステージにマッチした情報訴求があれば、少し気になるかも」と話してくれましたが、その切り口でどこまでキャッシュレス移行の気持ちを喚起できるかは気になるところです。