新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、経済正常化への期待からか今年に入って業績予想を上方修正する企業が増えているが、回復状況は一様ではない。経済アナリストの森永卓郎氏が語る。
「一般に低迷からの急回復を『V字型』、時間がかかる回復を『U字型』などと呼ぶが、現在の日本経済は業種や企業によって勝ち負けが二極化する『K字型』だと指摘されています」
『週刊ポスト』は有名企業の「夏のボーナス」を調査。企業ごとの支給額(別掲の一覧表参照)を見ると、ボーナスでも二極化する「K字決算」の影響が浮き彫りになった。
業績が低迷した企業には“冷夏”が訪れた。
特に「五輪スポンサー企業」が厳しい。海外旅行やビジネス渡航の需要減が響いた全日本空輸(ANA)、旅行大手のJTBは昨冬に続いて2期連続のボーナス支給「ゼロ」回答。日本航空(JAL)は支給こそされるが、0.3か月分だ。
一方で、コロナ禍が商機となり右肩上がりのラインに乗った企業もある。キーワードは「在宅」「巣ごもり」需要の増大だ。
〈要求を上回る異例の回答です〉。広報担当者がこう語ったのが、過去最高の支給額となった名門・ソニー。労組の要求を上回る年間7か月、今夏は5か月分と大盤振る舞いだ。一方で三菱電機は昨夏と同額、日立製作所は微減に留まった。『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。
「電機メーカーの決算は、ソニーの独り勝ちでした。背景にはここ数年、ソニーが同業他社とは違う方向へ舵を切っていたことが影響しています。
コロナ禍で日立や三菱、東芝やパナソニックといった企業は『白物家電が好調』と報じられましたが、家電はあくまで売り切りのビジネス。ソニーの決算は全く異なり、ゲーム、音楽、映画を含むエンタメ事業が売り上げの5割を占めた。
これまでのゲーム機は一度売ったら、あとはソフトを売るビジネスでした。しかし、昨年発売の『プレイステーション5』は違う。通信対戦などのネットワークサービスの利用料を全世界で5000万人ものユーザーから継続的に得ています。コロナ禍で儲かったのではなく、コロナ禍がビジネスモデル転換の収益化を加速したのです」