人は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に説明のつかない行動に出るもの。そんな“ありのままの人間”が動かす経済や金融の実態を読み解くのが「行動経済学」だ。今起きている旬なニュースを切り取り、その背景や人々の心理を、行動経済学の第一人者である法政大学大学院教授・真壁昭夫氏が解説するシリーズ「行動経済学で読み解く金融市場の今」。第24回は、日米の株価の先行きについて予測する。
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各国の金融当局がコロナ対策として進めてきた強力な金融緩和。市場に大量の資金が流入することで世界的な株高を作り出してきたが、それを支えていた「カネ余り」と「低金利」がいよいよ反転するのか、注目が集まっている。株高の中心を担ってきた米FRB(連邦準備制度理事会)が6月15~16日に開いたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、テーパリング(量的緩和縮小)が議題にあがったからだ。
FOMCでは、これまで2023年と見られていた利上げの時期が前倒しになる可能性が示唆されたことを受けて、日米ともに株価は乱高下。NYダウは18日に500ドル超の急落後、翌営業日の21日には500ドル超も急騰。日経平均株価も21日に一時1000円超の急落となったが、翌22日は900円近く反発するなど、まさにジェットコースターのような相場と化した。
その後、株式市場は落ち着きを取り戻し、まだ市場に流入していない待機資金も十分にあると見られるため、しばらくは大きく下がることもなく、揉み合いが続くことが予想される。何より株式市場では「カネ余り」と「低金利」という心地良い状況が常態化し、一時的に下がっても株価は上昇を繰り返してきたことから、投資家の間では「下がったら買い」という「心の慣性の法則」が働いてきた。「まだまだこのままで行けるはず」という心理が世界的な株高を支えてきたのだ。