人生100年時代を迎え、「何才になっても成長できる」、「新しいことを始めるのに年齢は関係ない」といった言葉が飛び交う昨今。新たな趣味や学びへのニーズは年々高まっているが、年齢を重ねるほど慎重になってしまうという人もいるかもしれない。昨年から新たな趣味を見出し、充実した毎日を送る女優の熊谷真実(61才)に話を聞いた。
昨年8月、熊谷は生まれ育った東京から静岡県浜松市に移住した。
「いちばんの理由は、自然栽培で野菜作りをしてみたかったからです」(熊谷・以下同)
東京から新幹線で1時間強の浜松は、都会でありながら、全国有数の農業地区でもある。
「気候がよくて、野菜、果物、魚、肉、なんでもおいしい。町を歩いていても、とても気さくに声をかけてくれます。また、SNSを通じて、自然栽培の仲間にも恵まれました。私、マグロと一緒で、じっとしていると死んでしまうくらい(笑い)、いつも動いているんです。いまは梅やビワを漬けたり、塩こうじを作ったり、“家仕事”がいちばん忙しい時季。東京で舞台のお稽古もあって、やることが山積みなのにフラメンコも始めてしまって(笑い)」
この年になってもまだ教わることがあるうれしさ
野菜作りに興味を持ったのは、食生活の見直しのため、料理を習うようになってから。
「母が57才で亡くなったのですが、私がその年齢になる少し前から体調が悪くなって、アレルギー検査をしたら卵、砂糖、牛乳、小麦粉、かきがアウトだったんです。洋菓子やスナック菓子が大好物だったのですが、しばらくそれらをやめ、ベジタリアンの料理学校に通って食生活を変えたら、心身ともに調子がよくなったんです。野菜の重要さを改めて実感し、料理だけでなく、食材も作ってみたいと思うようになりました」
6月からは、NPO法人が運営する自然栽培農学校「みつばちと畑のがっこう」のスペシャルサポーターに就任。仲間たちと本格的な野菜作りと養蜂を学び始めた。
「窒素が少ない土には、窒素の多いマメ科の雑草が生えるなど、邪魔者だと思っていた雑草が、実は土壌の性質のバランスを取るためには必要な存在だったのです。東京にいたときは知らなかったことばかりで、学びが多いなあと思っています。この年になっても、まだ教わることがあるというのはうれしい限りですね」