そのほか、明るい材料も散見される。先日発表された2021年4-6月期を対象とした日銀短観によれば、大企業の製造業および非製造業の業況判断(DI)は、「最近」、「先行き」ともに前回より改善した一方で市場予想は下回った。しかし、設備投資計画(前年比)は製造業で4倍超(3.2%から13.3%へ)、非製造業でも2.5倍超(2.9%から7.4%)へと大きく改善したうえ、市場予想もそれぞれ上回った。とりわけ、製造業の市場予想は9.2%だったため、上振れ度合いが大きい。
さらに、業種別でみると、半導体製造装置などを含む生産用機械や、自動車において「先行き」の改善が確認された。半導体はスマホやPCといった家電から、ゲーム機、電気自動車(EV)、高速通信規格「5G」、データセンターなどまで広範囲での需要増大に加え、サプライチェーンの乱れから需給の逼迫が来年後半まで続くとの見方も一部にあるなか、好況が裏付けられた形だ。加えて、日本半導体製造装置協会(SEAJ)が7月1日に、2021年度の日本製の半導体製造装置の販売額が20年度比で22.5%増の2兆9200億円になるとの予測を発表している。1月時点の予測を4200億円上回り、2年連続で過去最高を更新する見込みだ。
自動車も、足元は半導体不足でDIが悪化したが、今後は半導体不足が徐々に解消されることが想定され、先行きは改善する見込み。また、ドル円相場も1ドル=111円台半ばにまで円安が進展しており、主力企業の2021年度の想定為替レートが1ドル=105円台にあることを踏まえれば、上振れ期待に繋がる。
先週は、半導体関連でマルマエ<6264>が好決算ながらも出尽くし感で大きく売られた。しかし、上述の通り、半導体業界は活況で先行きも明るい。前倒し発注による在庫の過剰な積み上がりなどを気にする局面にもまだないと思われ、下げ一巡感がみられるところで中長期では押し目買いが妙味とみる。
そのほか、今週も引き続き小売企業を中心に決算が多く予定されている。先週は、Jフロント<3086>やアダストリア<2685>が冴えない反応となった一方、しまむら<8227>、ニトリHD<9843>などが大幅高となった。また、ヒマラヤ<7514>は、直後は出尽くし感が先行して売られたものの、週末にかけては切り返した。このように、小売決算ではポジティブ視する動きも散見された。今週も引き続きポジティブ視する動きとネガティブ視する動き、どちらが優勢となるか注目したい。
また、週後半には竹内製作所<6432>、SHIFT<3697>、安川電機<6506>など小売以外でも注目度の高い企業決算が予定されている。特に週末の安川電機の決算は内容が消化されるのは翌週となるが非常に注目だ。振り返ってみれば、前回の1-3月期決算では、好内容にもかかわらず市場予想に届かなかったことで安川電機の株価が急落。これを機にガイダンスリスクが意識され、その後の製造業決算に対する懸念が高まった。今回は、逆に懸念を振り払ってくれるような結果になるのか、それとも、前回の二の舞となってしまうのか、注目したい。
なお、今週は6日に5月家計調査、5月毎月勤労統計調査、米6月ISM非製造業景況指数、7日に5月景気動向指数、8日に6月景気ウォッチャー調査、9日に7月限オプション取引特別清算指数算出(SQ)、中国6月生産者・消費者物価指数、G20財務相・中央銀行総裁会議などが予定されている。