広島県に住む70代男性は、自分たちが死んだ後、子供たちが相続でもめないようにと、生前に財産の一覧を整理して子供たちと共有した。「これだけ遺産がもらえるんだから、きちんと面倒を見よう」と思ってくれるかもしれない――そんな密かな期待もあったというが、それが間違いのもとだった。
「長男が『余裕があるんだから、孫の習い事のお金を出して』と言ってきて、それを耳にした長女や次男も『それなら、うちの子にも』と……。私たちのお金にばかり興味が向いていることを痛感して、愕然としました」
こんな“毒子”にはどう対応するのが正解なのか。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏は、こうアドバイスする。
「子供は親に財産があるとわかると、『自分たちのために使ってくれるはず』と都合のいいように解釈しがちです。そうならないためには、遺言書をまとめていることを示唆して、『お前たちが変なことをしたら、相続させないから』とクギをさしておく。逆に財産が少ない場合は、『これだけしかないよ』と開示して、『自分たちの老後のためにしか使えない』ときっぱり言ったほうがいい」
子供への相続よりも妻の生活を優先する考え方だってある。自分の死後、遺産が妻に渡るようにするのだ。
「遺言書に『妻にすべて相続させる』と書いておく方法があります。子供は最低限の権利である遺留分(※注)の申し立てはできますが、生前に子供たちと話し合い、『いま贈与するから、遺留分は放棄してくれ』と言って家庭裁判所で手続きをしておけば、確実に妻に財産を残せます。
(※注 亡くなった被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保障される遺産取得分)
妻のためにいまの家だけでも確保してあげたいと考えるなら、遺言書などで、配偶者居住権を遺贈しておくのも有効な手段です」(前出・黒田氏)
親の遺産をアテにする子供には、生きているうちに手を打つべきだ。
※週刊ポスト2021年7月16・23日号