ワクチン接種が進むものの、いまだ新規感染者数は下げ止まらない新型コロナウイルス禍。都市部の大学では、現在も大人数講義でオンライン授業が続けられている。Zoomをはじめとしたビデオ会議ツールに慣れてきた学生も増えているが、オンライン講義では“プライバシー”に関する意識の低さが露見するケースもあるようだ。
都内の私立大学で教鞭を取るAさん(30代)は、次のように不安の声を寄せる。
「同時双方向型(※リアルタイムでZoomなどを使い授業をすること)の演習や講義の際に、『なるべく背景は白壁にするか、バーチャル背景を設定するようにしましょう』と呼びかけています。しかし、多くの学生が自室やリビングが見える状態のまま、ビデオをオンにしているのです。先日は、服や下着などが散らかったままのベッドが映り込んでいる学生や、部屋の窓から自宅が特定できそうなビルなどが映っている学生もいました。
SNSに投稿した画像から、ユーザーの自宅や生活エリアが特定されることは珍しくありません。それによってストーカー被害に遭うケースもある。そうした報道を紹介しながら啓発しているのですが、学生たちは『部屋が見えても特定されるわけがない』と高をくくっているのか、なかなか対応しようとはしません」
こうしたA氏の指摘を受けて、別の都内大学で勤務する助教・B氏(20代)も、次のように語る。
「たしかに、僕が担当している授業でも部屋が丸見えの学生は少なくありません。部屋に貼っている“推し”のポスターや写真までくっきり見える場合もあります。本人たちはなにも気にしていないようですが、やはり保護者や教員が啓発していくべき問題でしょう。
一方で、それを単純に学生の意識の低さだけの問題と片付けられない事情もある。たとえば、Zoomで『バーチャル背景を設定してください』と言っても、PCのスペックによっては背景が設定できない仕様になっている。デュアルコア2Ghz以上のプロセッサを搭載しているか、OSを最新版にアップデートしているか、などスペック要因も大きい。そうした際に、『せめて無地の壁をバックにしてほしい』と伝えても、『無地の壁だけが写せるような場所はありません。どこで授業を受けても生活空間が映ります』という下宿学生もいるわけです。