老後の医療・介護のケアについて「夫婦で」あるいは、「ひとりで」のほうがいいという考え方がある。というのも活用できる公的制度や行政サービスが数多くあるからだ。
「各種制度を活用すれば、子供に頼らずに生きていきたいという願いを叶えることは可能でしょう。ただし、事前の準備は必要です」
そう話すのは介護・暮らしジャーナリスト太田差惠子氏だ。早めの介護保険の活用が住宅のバリアフリー化などで助けになることはすでに述べたが、メリットはそれだけではない。
「介護保険には、洗濯や掃除、調理などの家事をお願いできるホームヘルプサービスの生活援助というメニューがあります。子供と同居していると使えないのですが、高齢者のみの世帯だと認められるケースが多い。本格的な介護が必要になる前に、地域包括支援センターへ相談に行くといいでしょう」(太田氏)
介護保険でカバーされない部分を補う行政サービスの活用も重要となる。たとえば、体調が急変した時などに専用端末から民間警備会社や消防局の受信センターに連絡できる緊急通報システムだ。
「自治体によって単身者向けだったり、介護認定を受けている人向けだったりと対象者は異なりますが、転倒して動けなくなった時などにも使えるサービスです。
自分の住んでいる自治体には、高齢者のみの世帯に向けたサービスとしてどのようなものがあるか、あらかじめ調べておくとよいでしょう。食事の宅配サービス、定期的に電話で連絡を入れてもらえる福祉電話訪問、電磁調理器や自動消火装置などの火災安全システムの給付といった取り組みをしている自治体もある。ただし、徒歩圏内に親族が住んでいると認められないなど、自治体ごとに使える世帯の規定は異なるので注意が必要です」(太田氏)